退職しない教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

2026-01-01から1年間の記事一覧

われら/やつらを越えて語り合うために

「人を批判したくなったときは少し待て。人は皆、お前が持っているような恵まれた条件を持っているわけではない」 『グレイト・ギャツビー』(F・スコット・フィッツジェラルド)の冒頭で、語り手が父から授かった助言である。何とも印象に残る一言だ。人は…

菊畑茂久馬が語る近代美術のドラマ

画家や美術に関する本がこんなにもおもしろいのはなぜでしょうか。ひとつには、画家たちの人生がしばしば波乱に満ちていること。そして、作品を通して「人間とは何か」「私たちの社会はどのように歩んできたのか」という歴史的な発見があるからだと思います…

キセキ

M先生が亡くなりました。かつて私は、校長だったM先生と1年間だけ一緒に働きました。穏やかで誠実な先生で、嫌な思いをしたことは一度もありません。短い期間でしたが、今も鮮やかに思い出せる場面がいくつもあります。 その年、職員室の改修工事があり、夏…

世界は何もしない

小さな街の物語です。AさんとBさんの争いが長く続いています。街の多くの人たちは「どちらも悪いから、早く争いをやめてほしい」と言い、どちらか一方の味方をするのはよくないと話しています。 しかし、本当にそれでよいのでしょうか。 Aさんは裕福で、いつ…

匂いで世界を読み取る子どもたち

「チョコレートのにおいがする…」 中休みが終わり、子どもたちが教室へ戻ってきたときのことです。 クラスでいちばん小さな女の子が、ぽつりとつぶやきました。 私は、その言葉に気づかないふりをしました。 コーヒーと一緒にチョコを流し込み、そのあと念入…

僕は仰向けになって目を閉じ、何時間も雲雀の唄を聴き続けた

神戸へ行った。 何で神戸なんだろう。 はじめに浮かんだのは村上春樹。 デビュー作、「風の歌を聴け」の舞台は神戸がモデルだと推測できます。 「前は海、後ろは山、隣には巨大な港町がある。ほんの小さな街だ。港からの帰り、国道を車で飛ばすときには煙草…

母語の外で生きる経験から生まれる豊かさ

入学式前日の準備作業では体育館のトイレ掃除をしました。男子トイレの掃除を6年生の男の子と一緒に済ませてから女子トイレの確認をしました。担当の女の子に話しかけてもキョトンとしています。それを見ていた男の子が教えてくれました。「先生、その子は中…

黄色い家 題名は磨かれた要約文

「黄色い家」(川上 未映子 著)を読みました。 17歳の「花」は家を逃げ出し、黄美子という年上の女性に拾われ、仲間と「黄色い家」で共同生活を始めます。温かさに救われる一方、生活のために犯罪に手を染め、やがて悲劇が訪れます。よい小説はノンフィク…

ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会

我が家の娘たちが幼い頃、夢中になっていたプリキュア。そのアニメが面白い進化を見せています。 プリキュアが戦う相手は自分たちに未来はないと感じている悪者たち。しかし彼らも元々は普通の存在でした。それが何かの理由で心を病み、闇の底に落ちてしまっ…

自分が大切にしたいのは何だったのか?

大学生の頃、映画をたくさん見ました。ヨーロッパ映画で記憶に残るものがたくさんあります。その中でも「野いちご」が忘れられません。1957年のスウエーデン映画、監督はイングマール・ベルイマン。 老人となった大学教授はこれまでの人生を振り返ります。世…

よいドラマは価値ある失敗の記録である

韓国ドラマ「二十五、二十一」(Netflix全16話)を観ました。傑作です。青春の痛みと輝きが美しく描かれていました。神保哲生さんが「すばらしい」と絶賛していた作品です。韓国ドラマではいつものことですが、登場人物たちが家族や仕事について真剣に考え…

外国語を学ぶことは楽しくもあるし危険でもある

毎日、朝5時に起きる。新聞を読みながら朝食をとって、6時25分に体操。6時45分からラジオ英会話を聴いている。このルーティンはこの10年くらい変わらない。英語学習を続けているのは単に楽しいから。そうか、英語ではこんな風に言うのか。自分は日本…

激情が疾走するむきだしの人間ドラマ

舞台「飛龍伝2026―かつて、若者たちが見た明日―」を観ました。原作はつかこうへい。「飛龍伝」は学生運動嵐の嵐が吹き荒れた1970年代の物語です。お互いに傷つけ合うことを回避する現代とは正反対。本音と本音がぶつかり合い、傷つけ合う人間たち。 …

今も終わらない戦争の話

「戦争みたいな味がする」(グレイス・M・チョー著, 石山 徳子翻訳)を読みました。 コリア系アメリカ人社会学者が自分の母について書いた本です。母は1941年に大阪で生まれました。終戦で朝鮮半島に帰りますが、朝鮮戦争で父と兄を失います。その後、生…

毎日が旅の途中だ

KBCシネマで「旅と日々」を観ました。監督・脚本は三宅唱、主演はシム・ウンギョン。河合優実、佐野史郎、堤真一も出演してます。原作はつげ義春の漫画「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」。 前半は夏。暑い季節なのに人物の心の中は寒い。どしゃ降りの…

かれらの音楽にはなぜこんなにも人生がつまっているのだろう

先週の職員会のできごと。 教頭先生が「最後にお知らせがあります」と話し始めました。「A先生はまだ年限ではないのですが異動となりました…。では、どうぞ伝えてください」 何の話だろう。 A先生は若い女性教師。いつも落ち着いていて慌てた様子を見たこ…

Candy 思い出すよ 君の笑顔

福岡空港のカウンターで、ふと横を見たら、「あっ、山下達郎だ…」 私が大学生の頃、1977年くらいかな。 ブレイクする前で、まだそんなに有名ではなかった。 その頃の達郎のアルバム「SPACY」を最近よく聞いています。 再発のアナログ盤です。 ベースは細…

「行動する傍観者」って何?

新聞で「アクティブバイスタンダー」の記事を読みました(朝日新聞1月17日)。ハラスメントや差別に第三者として遭遇したら、どうしたらいいのか? 「一般社団法人アクティブバイスタンダー協会」は、そんなときにどう動けばいいのか、考え実践する研修を…

サリンジャーとハナ肇 じわりと伝わる哀しみ

サリンジャーを読んだ。「彼女の思い出/逆さまの森」(金原端人訳 新潮文庫)。「彼女の思い出」はこんな話。大学生の「おれ」は、いいかげんな奴で、父親からウイーンで勉強してこいと言われてやってきた。おれはそこでリーアという美しい娘に出会う。おれ…

台湾の青春映画を見てハンナ・アーレントのことを考えた

佐賀の「シエマ」で台湾の映画「ひとつの机、ふたつの制服」を見た。 主人公の小愛は名門女子高校の夜間部に通う生徒。 この高校では昼間の全日制に通う生徒と同じ机を使う。 小愛は同じ机を使っている敏敏と仲良くなる。 二人は対照的。 小愛は勉強が苦手で…

誰もがブラピにはなれないけれど

元日はいつものように猪野神社に初詣。家に帰ってからおせちを食べて映画鑑賞。ブラッドピットの「F1」を観ました。30年ぶりに復帰したレーサーの物語。ペアを組む反抗的な若者との対立と…。良質のエンターテインメント。何しろ冒頭からツェッペリンの「…