なぜユージン・スミスに惹かれるのか。
水俣とユージンの名は、小さい頃から何度も耳にしている。
水俣がある熊本は私が育った福岡のとなり。
日本の公害、そして水俣がニュースになった1960年代から70年代にかけては私が小学校から中学校へ進む時期と重なる。
その頃に見た新聞やテレビのニュース映像で「ミナマタ」を見たことを覚えている。
この前、ニュースであのジョニー・デップがユージ・スミスを演じた「ミナマタ」という映画が完成したことを知った。
ジョニー・デップは何故か気になる俳優。
「シザーハンズ」「チャーリーとチョコレート工場」「スリーピーホロウ」そして「エド・ウッド」。人の心の複雑さを表現できる役者だと思う。
小学校の図書室でユージン・スミスを探したらすぐに見つかった。
子供向けに書かれた本なので一気に読み終わった。
読み終わった衝撃は言葉に表すのが難しい。
写真に対するとてつもない情熱。
それは被写体への思いと言った方が正確なのかもしれない。
そうかと思うと、気まぐれでわがままなところもある。
つまり、どこまでも人間的なのである。
苦しめられた人たちへの限りない愛情もあれば、身近な人への裏切りともとれる不誠実さもある。
不屈の精神力を持ちながら、同時に見せる人間的な弱さが切ない。
近代化の犠牲となった人々のために戦った一人の人間の生涯が心から離れない。