退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

『熱源』川越 宗一

今日は本の紹介です。近頃、ビジネス書やノンフィクションばかり読んでいたのですが、やっぱり小説はいいですね。しかし、つい夜更かししてしまって眠る時間が少なくなるのがつらいです。

 

『熱源』川越 宗一

 

職員室で給食を食べながら司書の先生と話していたら、この本を勧められた。私が何に関心をもっているのかを察して、おすすめの本を選んでくれるのはさすが学校司書。「熱源」は直木賞作品。私は基本的にはエンターテイメントの直木賞より、純文学系の芥川賞が好みなので、少し心配だったが一気に読んでしまった。村上春樹「1Q84」で引用されたチェーホフの「サハリン島」、映画「レッズ」ドクトル・ジバゴ」などロシアとサハリンに関する様々な場面が蘇ってきた。

第1次世界大戦、ロシア革命の激動の時代。ロシアと日本に翻弄されるサハリンの人々。ページをめくりながら、どっぷりと物語世界につかり、情熱や悲しみを共有した。

時代は明治から日本の終戦(1945年)まで、サハリンに住む人々、そこに来た日本人やポーランド人など、いろんな過去を背負った人々の運命が複雑に絡み合う。

ポーランド人、ブロニスワフ・ピウスツキはロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリンへ流された。祖国独立を強く願う彼はアイヌの人々との交流に癒され彼らのために力を尽くすが・・・。国家の強大な力にも怯むことなく命をかけて行動する人間の姿に心を打たれる。

この本を読みながら、日本と世界の近代を振り返った。私たちは何を残し、何を失くしたのか。歴史を振り返り、多様な生き方に思いをはせ、人間の未来について考えた。