退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「ソルハ」 帚木蓬生 あかね書房

全国的に新型コロナウイルス感染者が増加しています。福岡市でも小学校で教員や子どもの感染が確認されて、対策の徹底が行われています。常に換気をよくするために窓を開けているので、教室も職員室も寒いです。来年の冬までには沈静化しているといいのですが。

さて、今回は本の紹介です。

 

「ソルハ」 帚木蓬生 あかね書房

 

もう5年以上前になるが勤めていた学校の職員みんなで箱崎にあるイスラム教のモスクを見学させてもらったことがある。そこのイスラム教の信者の方にお話を聞かせていただいた。信者の方はとても穏やかで理知的だと感じた。実際に行って話を聞く経験は貴重である。それ以来、私のイスラムに対する関心は続いている。偏見をなくすには実際に会って話すことが一番。

この物語の主人公ビビはアフガニスタンのカブールに住む5歳の女の子。そのビビが2002年、15歳になるまでの出来事が描かれている。ビビが9歳のとき、カブールはタリバンによって支配され、その後、2001年にアメリカの貿易センタービルへのテロ攻撃が起きる。その報復としてカブールの町は米軍の空爆を受ける。カブールがタリバンから解放され、ビビの学校が再開されたとき、ビビは15歳になっていた。読者はビビの成長を見守りながらアフガニスタンの現代史を学ぶことができる。子ども向けに書かれた物語だが、大人が読んでも学ぶことの多い本である。

著者の帚木蓬生さんは、福岡県中間市で精神科開業医として活動しながら1年に1作のペースで小説の執筆を続けている。

 

「この物語はまた戦争を扱っています。私たち大人は、もうたいていの人が戦争を経験していません。戦争はおとぎ話の世界に思え、世界のいろいろな地域で紛争や戦いがあっても、自分たちとは無関係の対岸の火事に思いがちです。これからの21世紀、自分の国だけが平和であり続けるのは不可能です。再び平和を取り戻すには、長い時間と大きな犠牲が必要です。私たちは平和な国にいるからこそ、大人も子供も戦争の悲惨さに敏感でなければならないのです。

どうぞ、子供たちと一緒に、この物語の頁を開いて下さい。」(かつて子供だった大人のみなさんへ 帚木蓬生)本書より

※「ソルハ」の意味はダリ語アフガニスタン公用語の一つ)で「平和」

 

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