退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A」 出口治明著

先週は給食に鯛が出てきて驚きました。初めてだと思います。その前には鰤(ぶり)や福岡和牛入りボルシチもありました。ニュースでも度々話題になっていますが、このところ高級食材が行き場を失っています。それが学校給食にたどりついたということのようです。もちろんおいしくいただいていますが、生産者の皆さんのことを考えると複雑な心境です。

さて今日も再び出口治明さんの本の紹介です。

 

「歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A」 出口治明著 文春新書

 

戦国の武将たちを会社の上司だと考えます。

自分がその下で働くとしたら、信長、秀吉、家康の誰が一番いいと思いますか?

私はまず秀吉を選ぶでしょう。魅力ある人物であるし、部下を励ましながら育ててくれそうです。次は家康、物事を深く考えることができる人物のように見えます。部下のことも丁寧に評価してくれるでしょう。最も避けたいのは信長です。もしミスをしたら徹底的に痛めつけられそうで怖い。しかし、これらは今までに見てきた映画やTVドラマから作られたイメージです。

実際はどうだったのでしょう。秀吉は家来が失敗をしたり機嫌を損ねたりすると殺していました。家康も優れたリーダーとは言えません。信長や秀吉の後、何か新しいアイデアを考え出したわけでもありません。昔からの家来を大事にするのはいいのですが、それ以外の者を寄せ付けないのも困ります。それに比べて信長は金銀銅の三通貨制、楽市楽座、海外との交易など、アイデア抜群のリーダーです。仕事が失敗してもすぐに家来を殺したりしないのが信長でした。部下として仕えるなら信長が一番ですね。

 

もう一つ信長が優れているところは、仕事をミスっても部下を殺さない点です。史実をチェックすると、信長の部下で仕事のミスが原因で殺された人はいません。激しく叱責されたり、追放されたりはあっても、殺されないというのはとても安心できます。

信長は「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」という川柳のせいで怖いイメージが創られたように思います。あれは江戸時代に作られたものなので、家康を必要以上に持ち上げようとしています。

 

国も時代も違う二人の人物が重なることもあります。

毛沢東西郷隆盛の共通点は何だと思いますか?

2人とも革命をやり遂げることには超人的な力を発揮しましたが、新しい国を創り発展させることはできませんでした。西郷隆盛は倒幕後に西南戦争に敗れ、毛沢東が主導した大躍進政策文化大革命は失敗でした。この二人は偉大なリーダーであり詩人です。魅力的な人物で多くの人を引きつけましたが、結果的に多くの人の命を奪いました。

 

しかし、現実を直視しない詩人タイプが国のトップに立つと、部下や国民は疲弊します。日本でいえば、西郷隆盛(1828~77)が詩人の魂を持った永久革命家だと思います。明治維新がうまくいった理由の一つは、「詩人の毛沢東が早く退出して、鄧小平のような実務家が実権をにぎったことだ」という趣旨のことを作家の後藤一利さんがいわれています。これは西郷隆盛大久保利通(1830~78)のことです。まったくその通りで、至言だと思います。

 

このところ歴史関連本から遠ざかっていましたが、この本を読みながら歴史に関する興味が再びよみがえってきました。歴史はドラマチックで面白い。それだけでなく、現代社会の本質を探るためのヒントがここにたくさんあります。

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