昨日、福岡市の小学校では全校一斉のオンライン授業が実施されました。朝一番、パソコンの画面に現れた子どもたちは、どこか高揚した嬉しそうな表情をしていました。小さな妹が画面をのぞき込んだり、自分のペットを見せようとしたり。教室から見ているわたしもうれしい気分になりました。さて今日も新しい本の紹介です。
「読む文化をハックする」ジェラルド・ドーソン著 山元隆春・中井悠加・吉田新一郎訳 新評論
読むことを嫌いにする国語の授業に意味があるのか?
著者は元高校の英語(国語)教師。米国の高校の英語(国語)教育の実態をもとに、その大胆な改革案を提示しています。皆さんは日本の国語教育の現状をどのようにとらえていますか?
この本を翻訳した方(大学教授)の研究室で、様々な職業に就いている読書家10人にインタビューをしました。その中の「あなたは読書が好きですか?」の質問には全員が「はい」と答えているのに対して、「あなたは『国語』がすきですか?」には10人中9人までが「いいえ」と答えています。体育科では、生涯を通して運動に親しむことのできる子を育てることが大きな目標となり、苦手な子でも楽しめる指導が進んでいますが、国語科ではそのような配慮はどれくらいできているのでしょう。
この本の目次を見てみましょう。
1 読書家に焦点を当てる
2 読む文化とカリキュラムのつながりをつくる
3 教室の図書コーナーを充実させる
4 読むコミュニティーを築くために評価する
5 読むことを学校の中心に据える
「3 読むコミュニティーを築くために評価する」の中に、優れた読書家の行動がリストアップされています。
・その本が適しているかどうかを評価するために、友だちの推薦内容に耳を傾ける。
・グッドリーズ(Goodreads)や、その他のソーシャルメディアのサイトに書かれたブックレビューを読む。
・曖昧なところや面白い部分、登場人物がある行動を起こしたときの動機や作家のスタイルに目を向けながら、他の読み手とのディスカッションに参加する。
・本を評価したり、レビューを書いたりする。これは、グッドリーズや読書メーター、アマゾンのカスタマーズレビュー、ブログなどへ投稿したり、自分だけのリストを記録したりするといった形でできる。
・面白さについて熱く語ったり、その内容を知らせたりするために、友だちに本についての話をする。
・自分が面白いと思った書評や紹介文のどこがよいのかを考える。
このような項目を評価規準として教師と子どもが共有できたら、子どもたちは読書家としての強いアイデンティティーをもち、自らの読む体験を深めることができるようになるでしょう。この記述から皆さんもお気づきだと思いますが、これらの優れた読書家の行動例は、「読むコミュニティーづくり」にもつながります。読むことの指導と評価が一体化し、同時に「読む文化」が教室に広がれば、それはどんなに素晴らしいことでしょう。