退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「英語独習法」今井むつみ

先週は、給食に「あなご」が出ました。驚きの食材は和牛、鰤、鯛と続いています。しかし、子どもは「ありがたみ」がよく分かっていないようです。分からないですよね。

さて今日も本の紹介です。

この本は売れています。新聞の書評でも取り上げられ、本屋でも平積みされています。
2020年12月18日に発行され、私がもっている2021年1月28日版ですでに4刷です。
著者の今井むつみさんは、認知科学言語心理学発達心理学の専門家。
「ことばと思考」「学びとは何かー〈探求人〉になるために」「言語と身体性」などの著作があります。この本のよさは、単に英語の独習法がわかるというだけでなく、「学び」や言語の仕組みが丁寧に解説されているところです。

学習のときに何が起こるか考えてみよう。教える側がどんなにわかりやすく教える内容を提示しても、それが学習者の期待と一致しないもので、学習者が別の情報を期待していれば、教えられた情報に気づかず受け流してしまう可能性が高いのである。学習者がどんなに集中して聴いたり読んだりしていても、である。

これをどう思いますか?
当たり前と思うかもしれませんが、これを考えないまま授業をしている教師は少なくないと思います。
よい教材を分かりやすく教えれば、それはきっと子どもたちに伝わると考えてしまいます。子どもの特性や興味と合わなければ伝わらないのに。

スキーマとは「知識のシステム」ともいうべきものだが、多くの場合、もっていることを意識することがない。母語についてもっている知識もスキーマの一つで、ほとんどが意識さらない。意識にのぼらずに、言語を使うときに勝手にアクセスし、使ってしまう。子どもや外国の人がヘンなことばの使い方をすれば、大人の母語話者はすぐにヘンだとわかる。しかし、自分がなぜそれをヘンだと思うのか、わからない。母語のことばの意味を説明してくださいと言われたときに、ことばで説明できる知識は、じつは氷山の一角で、ほとんどの知識は言語化できない。これは、自転車に乗れても、脳にどのような情報が記憶されているから自転車に乗れるのかが私たちには説明できないのと同じことだ。

日本語を学習している韓国の方と話したときのことを思い出しました。似たような意味をもつ二つ日本語についてその違いを尋ねられました。
ほとんど同じような使い方をする二つのことば、その違いを意識して使い分けができるかどうか。このことは母語でも外国語でも同じですね。
この「非常に複雑で豊かな知識のシステム」であるスキーマの重要性がよくわかります。

幼児期という短く貴重な時間の中で子どもが何を学ぶかがもっとも大事で、そのために大人はどのような環境を提供すべきか。○○国では、○○メソッドが効果をあげているという情報を参考にしつつも、自分が暮らす環境の中でどうしたら子どもがもっとも楽しく、よく学ぶことができ、子どもが大きくなってからの幸せにつながるのかを考えてほしい。幼児期に他の子どもに先んじて少しの英会話ができるより、成人になってから、英語をプロフェッショナルレベルにまで極めていける術をみにつけたほうが、最終的には絶対に有利なのである。(幼児期に育てるべきことばの力は何か、そのために親が何をするべきかについては拙著「親子で育てることば力と思考力」(筑摩書房)をご一読いただきたい。)

幼児期に身につけさせたい大切な力は何でしょう?
母語の力、非認知能力、やり抜く力(グリット)などが思い浮かびます。
安定した母語の基盤がなければその後の外国語の学びに深まりはないでしょう。
うまくできなかったり、失敗したりしてもあきらめずに挑戦を続ける心も大切です。
問題を解かせたり、表現させたりすることは重要ですが、幼児期に必要なのはその基盤を固めることだと思いました。

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