退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「教師の仕事術 10の原理・100の原則」堀 裕嗣著

「教師の仕事術 10の原理・100の原則」堀 裕嗣著 明治図書出版

4月からの仕事が決まりました。引き続き1年次教員の指導を続けることになります。6名の教師、週1回の指導を行いますが、毎回確実にその力量を向上させることができるように準備を進めています。この指導では単に技術だけを教えるのではなく、その基盤にあるものを伝えることができるようにしたいと思っています。一番の目的は、彼らに幸せで充実した教員人生を送ってもらうことです。そのためのヒントとなる本を探していたら…、ありました!

自分の日常を発信型にすること これが毎日の仕事を充実させるための最良の方法です。自分の生活を発信型にすると必然的に受信も充実していきます。
 例えば、毎日学級通信で子どもたちのエピソードを二つずつ紹介すると決めたとしましょう。すると、何か通信のネタになるものはないかという目で学級の子どもたちを見るようになります。最初は「これは!」という大きなエピソードばかりに目が向きがちですが、慣れてくると子どもの何気ないやりとりに実は大きな価値があることに気づかされたり、一度も通信にエピソードを書くことができないでいた子を集中してみているうちにその子の意外な面を発見したり……、そんな副産物が生まれ始めます。こうなるとしめたものです。子どもを見る目が急激に養われていきます。(本書「日々発信の原理」より)

学級通信に子どものエピソードを継続して取り上げること。昨年度も1年次教員に強く勧めたことですが、毎日の学校生活や授業中で子どもたちが見せるよい気づきや考えをメモして紹介することを継続すれば、子どもたち全体によさ広げることができます。子どもたちと教師、子ども同士の信頼関係も自然に構築されます。書くことを中心にした仕事スタイルを身につけてほしいと思っています。

どんな事象・現象にもその裏にある「個別事情」、即ち「背景」があります。漢字を苦手とする子には漢字が苦手となるその子なりの背景が、多動傾向の子には多動となるそのなりの背景があります。決して漢字を苦手とする子の漢字が苦手な理由は一律ではない、個別のものなのです。「HOW」という問いは、教師の視点を一般的な「技術」に向けさせます。これに対し「WHY」という問いは、その子や集団の個別的な事情や背景に目を向けさせます。「WHY」だけが潜在的な個別事情を顕在化させようとするベクトルをもつ問いなのです。(本書「『WHY』だけが潜在を顕在化させる問いである」より)

よい学級をつくるために、授業を改善するために取り組む課題はたくさんあります。そのときに私たちの対応は、「どうしよう」つまり「HOW」が中心となりがちです。その原因や背景を十分に考えないまま取り組みを優先させてしまって、良い結果が得られないばかりか、間違った対応をしてしまうことさえあります。この「HOW」から「WHY」への転換は重要な指摘だと思います。
この本は、これから教師生活をスタートさせる1年次教員にとって有益であるだけでなく、すべての働く人にとって役立つヒントが満載の本だと思いました。

 

f:id:shinichi-matsufuji:20210329171701j:plain