退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「子どもの自己肯定感を高める 10の魔法のことば」石田勝紀著

先日、ラジオの文化講演会でこの著者の話を聞きました。
つい引き込まれて聞いているうちに1時間が過ぎていました。
まず、日本の子どもたちは「偏差値」を自分の価値と思い込んでいるという話題。
「そんなことはない」と否定できますか。
少なくない大人が、自分では意識せずにそういう価値観をもっているのではないでしょうか。
テストの点数でその子の人間の価値か決まるはずはないにもかかわらず。
私たち教師も点数で子どもを判断してはいけないと分かっているはずなのに。
子どもたちは毎日のようにテストで点数をつけられます。
学年が上がるにつれてその差は大きくなっていきます。
日本の子どもたちの自己肯定感が他の国に比べて低いことが話題になりますが、多くの大人がそのような価値観を意識せずに子どもへ伝えて子どもの自己肯定感を下げているのかもしれません。

「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」「勉強しなさい」
著者はこの3つを「呪いの言葉」として、使ってはいけないと主張しています。
これらは子どもの自己肯定感を破壊し、「人から言われないとやらない」自己肯定感を失わせる言葉です。
これらの言葉を言われる数だけ、「自分はできていない」「自分はダメな人間」だというネガティブな感情が蓄積されていきます。
自分が言われたらどのように感じるのか考えてみましょう。
「仕事しなさい」「早く仕事しなさい」「ちゃんと仕事しなさい」
こんな言葉を言われ続けたらどうなるかわかりますね。
「料理しなさい」「ちゃんと料理してね」「早くつくってよ」
これでは「やる気」は消えていきます。
「今日のごはん、おいしかったよ」「毎日、掃除してくれてありがとうね」「いつもふかふかのバスタオルでうれしい」
こんなねぎらいや感謝の言葉をかけられると、「明日もがんばろう」と思います。
子どもは勉強が大切なことは知っています。
分かり切ったことを言っても効果がないだけでなくマイナスです。
子どもに勉強してほしいのであれば、「勉強しなさい」という言葉ではなく、「すごいね」「さすがだね」「いいね」など承認の言葉、そして感謝、感心、安心などが伝わる言葉を使うことです。
自己肯定感が高まれば、子どもは言われなくても勉強するようになります。
この本は、子をもつ母親を主な対象として書かれていますが、教師にとっても参考になります。

「褒めて育てよ」という教育理念があるように、褒めることは決して悪いことではありません。
しかし、私はいつも「褒めるのではなく、徹底的に認めてください」と申し上げています。認めるという行為は、褒めるとほぼ同義のようですが、「お子さんを褒めてください」と言うと、たいてい大げさだったり、わざとらしかったりするものです。
そんな不自然な褒めの姿勢に、子どもたちは「うそ臭い演技」を嗅ぎつけます。親が繰り出すうそを見抜いて、反発したり、不安になったり、がっかりしたりという反作用を起こして「うざい」とはねつけてしまいます。
では「わざとらしく」ならないようにするにはどうしたらいいのでしょう?
そのコツのひとつが、軽くしゃべることです。
明るく、さりげなく、認めることです。
「認めること」は、大げさに意識しなくても、だれでも、いつでも表現できるポジティブな行為であり、無理がないため、子どもに真意が伝わりやすいのです。
また、「褒めること」に比べると、相手への刺激が小さく、飽きられるということも少ないので、子どものやる気や自己肯定感を高めるには最適な言葉でもあります。
ぜひ「すごいね」「さすがだね」「いいね」と簡潔に表現してください。(本書「使い方のコツ1 魔法のことばは『軽く、明るく、さりげなく』使う」より)

 

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