今日は終戦の日です。
「どうして日本はあのような無謀な戦争を始めたのだろう」と考えたことはありませんか?
軍部が権力を握って暴走したから誰も止められなかった…。
しかし、本当にそうでしょうか?
多くの国民は戦争に「賛成」していました。
軍部だけに責任を押しつけるのは正しくないと思います。
若い世代に近現代史を学んでほしいという願いからこの本が生まれました。
これは、中高生を対象とした講義の記録をまとめた本です。
生徒たちに、「もし自分が作戦計画の責任者だったら」「満州移民として送り出される立場であったら」と考えさせます。また、日本からの視点だけでなく、中国の視点、列強の視点、最新の歴史研究成果も加えてあります。
著者は「陸軍のスローガンに魅せられた国民」について、以下の事例で説明しています。
同じく陸軍の統制派が、34年1月に作成していた計画書「政治的非常事変勃発に処する対策要綱」にも、農民救済策が満載されていました。政友会の選挙スローガンなどに農民救済や国民保険や労働政策の項目がなかったのに対して、陸軍はすごいですよ。たとえば、農民救済の項目では、義務教育の国費負担、肥料販売の国営、農産物価格の維持、耕作権などの借地権保護をめざすなどの項目が掲げられ、労働問題については、労働組合法の制定、適正な労働争議調停機関の設置などが掲げられていた。戦争が始まれば、もちろん、こうした陸軍の描いた一見美しいスローガンは絵に描いた餅になるなるわけですし、農民や労働者の生活がまっさきに苦しくなるのですが、政治や社会を変革してくれる主体としての陸軍に期待せざるをえない国民の目線は確かにあったと思います。
困窮している農民や都市労働者の願いを政治家は受け止めることができなかったのです。
しかし、軍人はその解決策を提示しました。
その虚偽を見抜くことができないまま、受け入れます。
では、知識人たちはどうだったのでしょう。
当時の東大生の多くが武力行使を肯定していたというアンケート結果も紹介されています。
これは陸軍が東大へ優秀な講師を派遣した「成果」です。
「なぜ日本は戦争を始めたのか?」という問いの答えは単純ではありません。
しかし、複雑な問いを単純化するのではなく、丁寧に根気強く検証していくことが大事です。
新しい学習指導要領でも現代を読み解き未来を生みだすために近現代史を学ぶ重要性が述べられています。
高校「歴史総合」では、現代の問題を考えるときに、過去の出来事から学ぶという視点が加えられています。歴史を解明することで、現代の課題を考えるという授業の試みも進んでいるようです。(※1)
※1「新学習指導要領で高校社会科は大きく変わる」鼎談・鈴木寛×倉石寛×大野新