退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「未来への大分岐」マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン 斎藤幸平編

私が訪問している小学校の4校のうち1校が2学期制です。

その学校では、今度の金曜日に前期終業式が行われます。

教員の長時間勤務改善はなかなか進んでいません。

2学期制は膨大な量の仕事に忙殺される教員にわずかながらゆとりをもたらします。

それは子どもたちにとっても有益なことだと思います。

 

「未来への大分岐」マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン 斎藤幸平編 集英社新書

今朝の新聞で干からびたワニの死体を見ました。

場所はブラジル、もとは世界最大の湿地帯だったところです。

「こんなに多くのワニが死んでいるのはみたことがない」と地元の人が驚いています。

 

これからの10年間にどんなことが起きるのでしょう。

世界各国が環境保全のために全力で取り組んでいる中で、日本政府の対応には真剣さが感じられません。

このまま環境保全への対応が遅れると、早ければ10年以内に海面の上昇によって大規模な食糧危機が起きます。

それと同時にアジアでも数百万の難民が生まれ、紛争も起きるでしょう。

そこには日本も確実に巻き込まれます。

この危機を回避するには、現在の経済システムを大きく変えなければなりません。

 

環境危機を考えるうえでポストキャピタリズムという発想が重要なのは、資本の活動の影響が甚大だらかです。「エコロジカル」というのは、エコな製品を選ぶとか、プラスチックをリサイクルするというような個人レベルの消費活動によって解決できる問題ではまったくありません。むしろ生産の次元が、決定的に重要です。実際、企業による生産過程におけるエネルギー消費や二酸化炭素排出量を考えれば、家庭レベルでのリサイクルをしてどうにかなる問題ではないわけです。逆に言えば、環境危機は、資本主義の決定的な問題点を、くっきりと見せてくれる。環境危機こそが、生産のあり方を大きく変え、ポストキャピタリズムへの道を切り拓く契機になりうると私が言うのは、そのためです。(斎藤幸平 本書312ページ)

 

では資本主義の代わる経済システムはどのように創造していくのでしょう。

ポール・メイソンは次のように語っています。

 

ポストキャピタリズムへの道は、古臭いレーニン主義者が主張する国家社会主義への道であってはなりません。資本主義経済と並行しながら、非資本主義経済を小さいスケールからつくっていくことが、ポストキャピタリズムへの移行プロセスなのです。自由への道を模索している主体的な個人の行為がネットワーク化していくことで、ポストキャピタリズムへの道が開かれていくのです。(本書303ページ)

 

ポストキャピタリズムの社会は、決して我慢を強いられるばかりではないと考えます。

現在、私たちが持っている資産や技術を活用すれば、より少ない労働時間で豊かな生活を実現することも可能です。

大量生産と大量消費をやめて、ものを大事に使い続けていくことも悪くないと思いませんか。

 

多くの人々が 少なくとも西洋社会では やるべき仕事を終わらせた後でも、作業時間を埋めるためにやるべきことを見つけています。現在レベルのオートメーション化であっても、一日の作業時間を短縮することは可能です。1日6時間、あるいは週休3日制は簡単に実現可能でしょう。実際、スウェーデンは試み始めています。(ポール・メイソン 本書276ページ)

f:id:shinichi-matsufuji:20211003133324j:plain