退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「もしわたしが『株式会社流山市』の人事部長だったら」手塚純子著 木楽舎

「もしわたしが『株式会社流山市』の人事部長だったら」手塚純子著 木楽舎

 

どうすれば街を活性化することができるのでしょう。

魅力的なコミュニティをつくるにはどうすればいいのでしょう。

この本にはその具体的な実践例が書かれています。

 

著者の手塚さんは結婚と同時期に千葉県流山市に移住します。

流山市は都心の通勤圏にあって、転入が増えているまちです。

そのまちで育休中に地域活動を体験し、多くの学びや出会いを得ます。

育休の終了後に職場に復帰するのですが、第2子の育休中に地域活動を仕事にできるのかを確かめるために行動を始めます。

市民団体を設立し、市と連携してイベントを成功させ、その体験と人脈を基礎として株式会社を設立します。

地域活動を会社として機能させるところがユニークです。

 

手塚さんの会社WaCreationは、流山駅舎の旧タクシー倉庫を改装してコミュニティスペースをつくります。

そこは、子ども、主婦、退職高齢者など多様な人たちの交流場所となり、数々のイベントが開催されます。

この地域にゆかりのある「みりん」を使ったお菓子の製造と販売、ローカル鉄道「流鉄」のグッズ開発など。

その他にも、特別支援学校や千葉大学との連携事業もあります。

 

手塚さんの構想の基本は、「まちは学校」「まちが人を育てる」です。

まちのイラストレーター橋本さんは、この活動がきっかけでその後独立します。

子ども店長」をしていた悠生くんは、その後、地域防災に関する提案を東京大学で行います。

地域の役に立ちたい、仕事がしたい、と思っている多くの人にチャンスをつくります。

 

手塚さんは、地域活動とビジネスの融合を成功させました。

はじめは1か所だった地域コミュニティ「machimin」は3か所に増えて、すべて収支は黒字です。

このような地域コミュニティの発展を願っている自治体と何か役に立ちたいと出番を待っていた人たちの両方に「利益」をもたらしました。

 

手塚さんはこの本の中で「暮らし方改革」という提案をしています。

このビジネスモデルは、専業主婦、退職高齢者、障がい者、子どもなどの社会参加を促進するだけではありません。

大量生産と大量消費の社会から転換するヒントにもなっています。

食料の地産地消のように、「ビジネスの地産地消」のモデルかもしれないと感じて、自分がやってみたかったことの道筋が見えてきて嬉しくなりました。

 

  日本の社会には、まだまだ「経済活動に従事している人の方がえらい」という価値観や風潮が根付いています。そうした中で、子どもや退職したシニア、専業主婦、障がいがある人、社会とつながりを持ちにくい人たちが挑戦しがいのある活動に継続して携わるには、非営利目的でも事業性を持たせて金銭を獲得できる仕組みづくりにこだわる必要を感じるのです。仕事を与えられなくとも、仕事は作れます。作ればいいのです。自分の“好き”や“得意”を軸に強みが換金されていくはずだ、世の中にある流れは変えられるのではないかという仮説を検証したいと思いました。(本書27ページ「はじめに」より)

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