退職教員の実践アウトプット生活

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「2年生担任のための国語科指導法 低学年のうちに習得させたい国語の学び方」土居正博著 明治図書

  新学期が始まって各学校への2回目の訪問が終わったところです。個々の教師や学級の課題はざまざまですが、まずは子どもたちに「聞く力」を育ててほしいと伝えています。

  私が見た学級の多くでは「発表している人の方を見て聞きましょう」「よい姿勢で聞きましょう」「手に何も持たないで」と態度面の指導が多かったです。もちろんこのような指導も大事ですが、「内容を聞き取ることができているのか」を問う指導こそが重要です。聞く態度はできているのだけど、実質は何も聞き取れていないことはよくあります。反対に聞いていないようで実はよく聞いている子もいます。聞き取れているかいないかは、聞き取ったことを言わせてみて初めてわかることです。その機会をできるだけ多くつくって、自分のクラスがどれくらい「聞く力」が育っているのかを教師が正確に把握することが大事です。同時に学級全体と個々の子どもにもその達成度を自覚させます。「自分はこんなに聞く力が伸びている」「クラス全体の聞く力はここまで高まっている」と分かれば意欲も高まります。

 

  では「実質的な聞く力」を育てるにはどうすればいいのでしょう? 子どもたちに自分が聞き取ったことを「言わせる」ことです。それを効果的に行うことができれば、子どもの「聞く力」は確実に伸びていきます。毎日の学校生活では、学習のことだけでなく生活のきまりなどでも注意を呼びかけたり指示したりすることがたくさんあります。それらの指示の後で、子どもたちに聞き取ったことを「言わせていく」のです。「先生の言ったことの一つ目は?」と問いかけて発表させます。授業中は、「今○○さんの発表したことを言える人?」と友だちの話を再生させます。朝会や行事でも、「今日の校長先生のお話は?」と問いかけます。

  「実質的な聞く力」を育てる一番いい方法は、聞き取ったことを「言わせていく」です。ただし、この指導ではタイミングには気を付けましょう。あまり頻繁にすると効果は薄れます。よい発言があったときなど、ここぞとという時に行います。

「聞く力」を高めるために、時には子どもたちにショックを与えることも必要です。友だちの発言を再生できない子が多かったら、「○○さんは一生懸命言ってくれたのに…」「本当に言えないの?」「それで友だちを大切にしていると言えますか?」と問い詰めます。授業は明るい雰囲気で進めることを基本としつつ、時には緊張感や厳しさも感じさせることも必要です。

「皆さん、よく聞きましょう」「分かりましたか?」ばかり繰り返していても「聞く力」を育てることはできません。聞いたことを「言わせていく」指導を効果的に取り入れることで、子どもたちの「聞く力」を高まっていきます。

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