退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

大阪の博物館に行ったら村上春樹を思い出したこと

「俺は黙って古墳を眺め、水面を渡る風に耳を澄ませた。その時に俺が感じた気持ちはね、とても言葉じゃ言えない。いや、気持ちなんてものじゃないね。まるですっぽりと包みこまれちまうような感覚さ。つまりね、蝉や蛙や蜘蛛や風、みんなが一体になって宇宙を流れていくんだ。」(「風の歌を聴け村上春樹 より)

 

大阪の中心部から電車とバスを乗り継いで約1時間、閑静な住宅街を抜けるとなだらかな丘に広がる緑地が現れます。

森の入り口には案内板があり、この一帯にあるおよそ100の古墳の場所が記されていました。

道を歩いていると、大小様々な古墳が訪問者を迎えます。

博物館は予想通り休日なのに人の姿はまばらでした。

学校の見学で来る小学生以外でここに行きたいと思う人は多くないですよね。

展示されている生活道具、装飾品からは1500年前に生きた人たちの声が聞こえてきます。

じっと見ていると1500年という時間は意外と短いのかもしれないと感じます。

全ての展示を見終わったら屋上に出ました。

建物の屋上全体が階段状で上部には長方形のモニュメントがそびえています。

2001年宇宙の旅」のモノリスのように。

建築家安藤忠雄が自らの代表作と公言しているのがこの「大阪府立近つ飛鳥博物館」。

風の歌を聴け」で主人公の親友「鼠」が古墳について語る場面があります。

鼠は古墳の前で不思議な感覚にとらわれます。

時間は永遠であり一瞬でもある。

人生には大きな意味があり無意味でもある。

しかし自分は書こうと思う。

それが何か意味のあることだと信じて。

これは作家村上春樹のスタートの決意だと思いませんか。

 

「文章を書くたびにね、俺はその夏の午後と木の生い繁った古墳を思い出すんだ。そしてこう思う。蝉や蛙や蜘蛛や、そして夏草や風のために何かが書けたらどんなに素敵だろうってね。」(「風の歌を聴け村上春樹 より)

帰りに地下鉄の駅を降りて歩いていると、前を行く若い女性が友だちに声をかけていました。

「ちょっとトイレにいってきマンボウ

大阪に来てよかった。