退職しない教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

母語の外で生きる経験から生まれる豊かさ

 入学式前日の準備作業では体育館のトイレ掃除をしました。男子トイレの掃除を6年生の男の子と一緒に済ませてから女子トイレの確認をしました。担当の女の子に話しかけてもキョトンとしています。それを見ていた男の子が教えてくれました。「先生、その子は中国人だから言葉がよくわかりません。」どうしようかと考えているうちの男の子が中国語でその子に説明していました。もうこのような場面はよくあることなのでしょう。

 多和田葉子さんの小説「研修生」を読んでいます。日本語だけでなく、ドイツ語でも小説や詩を書いている多和田さんは世界中に多くの読者を得ています。この小説は読売新聞に連載されていました。若い頃からドイツで暮らした作者の自伝的作品です。最近の授業研究では多面的、多角的な視点が重視されていますが、この作品ではそれが具体化された姿を見ることができます。日本語の場所を離れてドイツ語の中で生活することで見えてくること。今まで見慣れていたはずの日本語が違う姿で現れてきます。二つの言語を比べることで、違いが見えるだけでなく、もう一つの第三の視点が現れます。暮らし、考え方、人とのつきあい。比較しながら体験しながら思考をめぐらせると、人生はこんなにも豊かになります。

 私が勤めている学校では、中国からの子どもだけでなくアジアの様々な国から、そして、南米からの子どももいます。一部の政治家は、人気を得るために排外的な姿勢をアピールしています。そんな「大きな声」に負けることなく、子どもたちは学校という「小さな社会」で共に生きることの楽しさを学んでいます。

佐賀県伊万里市 2026年3月