退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

未知なものを身近なものに 身近なものを未知なものに

参観日の前日に校長先生から相談を受けました。休みが続いている1年生担任の代わりに参観の授業をしてほしいという依頼でした。私が専科教員として担当しているのは3~5年なので、どうして私なのだろう、と驚きました。しかし、事情については察しがついたので承諾して授業しました。どこの学校も同じような状況だと思います。必要な数の教員が配置されていません。日本の教育はこれからどうなるのでしょう。

福岡市南区長丘「サイラー」 2024年6月

「人類学者のレンズ」(松村圭一郎著)を読みました。

外国の話をすると、子どもたちはその不便さや安全でないことばかりが印象に残り、授業の終わりに感想を書かせると、「日本に生まれてよかった」となってしまい、困惑することがありました。

子どもたちに考えてほしいことは自分のものの見方について振り返り、相手に対する見方を変えてほしいことなのですが、そうならないことが残念であり、伝え方がよくなかったと反省するばかりです。

違う国の文化について学ぶことで、自分の当たり前を疑い、相手の身になって考える姿勢を身につける。文化人類学のレンズは学校教育にも必要です。

 

だからあれほど言ったのに

先週は娘の誕生日で博多駅のレストランを予約していました。家族全員の予定を合わせるのは難しく、やっと決めることができたのが11日土曜日の昼。その日は午前に歯科の予約があったが大丈夫だろうと思っていました。しかし治療は予想以上に時間がかかったうえに「3時間は食事をとらないように」と言われたのです。そのときになって思い出しました。前回の説明を。歯科医の表情から読み取ることができました。「だからあれほど言ったのに」

柳川 2024年5月18日

「だからあれほど言ったのに」内田樹

事象を分かりやすく説明するのはいいです。しかし複雑な問題を単純化してしまってはいけません。困ったことに今の日本では複雑な問題を単純化して語る人が「賢い人」としてもてはやされる傾向があります。
そして何が起きているかというと「その問題の答えはそれだったのか」と思考を停止させてしまった人が多くなっています。その方が楽だからですね。
言い換えると、知性の低下、考える力の衰えでしょうか。内田先生の指摘通り「大人」が消えている状態です。
学校で子どもたちに議論を教えるときに気を付けていることは、お互いの意見を尊重することです。AかBかを決めなくてはいけないときも、すぐに多数決としないようにしています。そのように考えた理由や事例を出させます。少数意見を尊重することを教えます。お互いに歩み寄ることはできないのか。落としどころを探らせます。この子たちが成人となる10年後の日本には「大人」が増えているといいのですが。

 

三島由紀夫と遠藤周作

遠藤周作文学館

連休は長崎の遠藤周作文学館へ。

読書会の友人が「深い河」について何度も熱心に語っていた。

長崎市内からバスに乗って約1時間。

海に面した最高の場所。

美しい夕日を見ることもできる。

裏切った人間にも救いはあるのだろうか。

神の沈黙について考えた。

三島由紀夫論」平野啓一郎

文学館で見た遠藤の日記には三島自決に大きな衝撃を受けた記述があった。

遠藤は三島最後の作品「豊饒の海」から次の小説の着想を得ている。

三島が遠藤周作にも影響を与えていたことは意外だった。

目立つことが好きで変わったことをしては人を驚かせていた三島だが、徹底して真面目で勤勉な人物だったことも間違いない。

映画『ゴジラ-1.0』を観た後には三島のことを考えてしまった。

神木隆之介演じる敷島は三島だ。

「なぜ自分だけ生き残ってしまったのだろう」

どんな成功も名声も消すことのできない心の傷がある。

平野啓一郎氏の的確な分析に感謝。

もう一度、三島由紀夫を読まなくては。

遠藤周作文学館

 

世界は経営でできている

先週は3年生の理科の授業をした。自然の生きものを観察に行って困ったのは名前が分からない花があること。調べてみると、スマートフォンのカメラで撮影すれば花の名前を教えてくれるアプリがあった。便利な道具ができたものです。

 

「世界は経営でできている」(岩尾俊兵著)は、楽しく読むことができて、考えさせられることの多い本だった。

「虚栄は経営でできている」の章を読んでいると「自虐と見せかけた自慢」の描写に笑ってしまったが、これに近いことを言ったような気もしてきた。少し心配しながら読み進めたが、「尊敬の奪取から尊敬の創造へ」は自分でもできそうなことなので、ほっとした。

「老後は経営でできている」の章も読んでいて少し苦しくなった。若手教師と話すときは説教調にならないように気を付けているのだが大丈夫だろうか。思いやりと居場所は人から奪い取るものではない。その通りです。それを自分も実践しているはずだと信じたい。

究極の目的は何なのか、を問い続けることが大事。国も社会も目先の利益ばかり追いかけて、長期的視点をもつことができていない。明日からの授業で子どもにも分かる言葉で伝えることができるといいのですが。

 

日台万華鏡

来年度から働く学校は決まっていました。

しかし、勤務校へ挨拶に行って打ち合わせまでしていたのに変わりました。

教育委員会も教員不足の中、人員確保に大変なことは分かっているので文句は言えません。

この4月から再任用8年目です。

小学校の外国語専科を任せてもらいました。

デジタル教科書の特性を生かした授業づくりにチャレンジします。

 

台湾と日本のあいだで考えた

「日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた」(栖木ひかり著 書肆侃侃房)を読みました。

馬祖(マーヅ―)は台湾の北西にある国境の島。1949年に蒋介石の国民党が毛沢東率いる共産党に敗北して以来、この馬祖と金門島が最前線となりました。ここには多くの軍事施設が作られてきましたが、兵士たちのトーチカ用のトンネルづくりや石炭などの資源をまかなうための炭鉱開発は過酷を極めたようです。私は硫黄島の兵士たちを思い出しました。

1987年に台湾の戒厳令が解除され、1994年からはこの馬祖に観光客も訪れるようになり、2022年からはアート・ビエンナーレが開催されています。この馬祖のアート・ビエンナーレは軍事遺跡の中のアートプロジェクトです。もともと馬祖では集落の景観保存やコミュニティの文化資源の保存といった文化運動がありました。私が望んでいる新しい観光の形がここにありそうです。次の台湾旅行の目的地が決まりました。地震からの復興を観光で応援します。

 

釜山の交番で「聞く力」について考えた

釜山の交番にあった聞くポーズの警察官の大きな写真。日本ではまず見かけない。写真を見ながらS校長先生から以前に聞いたことを思い出した。韓国の警察官はとても親切で優しいらしい。市民はそれを警察に求めているし、警察も要望に応えているという。

これは軍政時代のつらい経験から得たシステムだろう。警察は市民の安全を守ることが第一で、権力者の利益を守る組織ではない。こういうことは私たちが歴史に学び、政治をきちんとチェックしないと失われる。「聞く力」をアピールしながら支持率が下がり続けるリーダーのいる国。少しは釜山のお巡りさんを見習ってほしいですね。

釜山 2024年3月

 

釜山で地下鉄の運賃について考えた

1泊2日で釜山へ行きました。今回は元同僚の教員たちと一緒です。いつものように釜山のS元校長先生に案内をお願いしました。いつもと違うのは移動にすべて公共交通機関を使うこと。前回、地下鉄やバスに乗ってみると日本との違いを多く発見できて面白かったので、今回は地下鉄やバスを利用した計画を立ててもらいました。

空港から市中心部までの往復。1日目に山の近くのお寺まで行って、2日目は列車に40分乗ってキジャン市場まで出かけました。20000W(約2000円)あった交通カードにはまだ10000W残っていました。つまり使ったのは約1000円です。日本の半額以下だと感じました。S先生の説明によると、「公共交通機関の運賃は安くすべきである」という市民の願いが政治によって実現しているそうです。外国の生活を体験すると日本の課題が見えてきます。

釜山 2024年3月