上映館では老人が多くて彼らは映画が始まってもおしゃべりをやめないので困った、とネットの映画レビューにあった。私が行ったトリアス久山のユナイテッドシネマでも同じことが起きてたので笑ってしまった。
老いの哀しさ、リストラする上司の苦悩、親子の断絶、離婚などの重いテーマが描かれている。しかし、言い争いになっても何とか折り合いがつく。それをユーモアを交えて描く職人芸にうなってしまう。問題は簡単には解決しない、でも前を向いて歩いて行こうという気持ちにさせてくれる。
この映画が持っているリズムも心地よい。場面と場面のつなぎに現れる東京の風景。古くからある街の情緒、一方で新しくできたビルの群れは無機的。それは登場人物たちの心と重なる。山田監督は風景の変化を否定も肯定もしない。強く訴えるのではなく、静かに私たちの前に差し出して考えるように促している。
山田洋次91歳、吉永小百合78歳。たとえ年をとっても、こんなに優れた作品を創造できることを見せてくれる2人の天才に感謝です。