信じられない速さで 時は過ぎ去ると 知ってしまったら
どんな小さなことも 覚えていたいと 心が言ったよ 「人生の扉」竹内まりや
出雲に行ってきました。竹内まりやの実家の旅館が出雲にあると聞いたことがあったので、宿はそこにしました。竹野屋は古い建物ですが、手入れがよく行き届いていて感心しました。料理も素晴らしい。”Everyday is a special day.”のマグカップを買ってしまいました。
出雲大社にお参りした後は、松江の小泉八雲記念館へ。ギリシャで生まれて、アイルランドからフランス、アメリカ合衆国、西インド諸島、そして日本。八雲の生涯が物語のようです。
記念館で買った「明治日本の面影」(小泉八雲著)を帰りの列車で読みました。
どれも興味深いエピソードばかりですが、英語教師として接した日本の学生たちの思い出が特に心に残ります。八雲の家には彼を慕う学生たちが数多く訪れます。彼らはみんな礼儀正しく、しかも面白い話を八雲に聞かせます。自分の家にあるめずらしい品物を見せに来る者もいます。その中の一人は、出された菓子を一度も食べようとしません。不思議に思った八雲がその理由を尋ねると、彼は答えます。
「私は兄弟の一番下の末子ですから、もうじき独立して自活しなければなりません。いろいろ辛い目も耐え忍ばなくてならぬと思います。いまからこうしたおいしいものの味を覚えてしまうと、将来それだけ苦しい思いをしますから遠慮させていただきます」
貧しい学生や高等教育を受けていない子ほどそんな感心するような人間性を見ることが多いと書いています。豊かになると失われるものについて考えてしまいました。
「一度愛し棄て去った土地をふたたび訪ね、無傷でいることはできない。何かが失われていた」小泉八雲