母を亡くしたブレイディさんは旅に出た。
目的地はウイーン。
ヨーロッパの古都でエゴン・シーレを観る。
そこで、見知らぬ老人からヒットラーをめぐるウオーキングツアーを勧められる。
この有名な独裁者はウイーンの美術学校の入学試験に失敗した。
同時期にその美術学校に入学したのがシーレ。
ヒットラーが合格していれば、あの20世紀最大の悲劇は起こらなかったのか。
運命や歴史について考えてしまうエピソード。
デビットボウイはシーレと三島由紀夫について語っていた。
危うさとはかなさが人を引きつけることをボウイは自らの表現に昇華させようと試みた。
谷川俊太郎さんとブレイディみかこさんの往復書簡は言葉と表現をめぐる思索の回廊。
この世とあの世の間にあるのかその世。
詩人も音楽家もその世の住人。
普段は目に見えないものを私たちに差し出す。
もう一度この本を読んでその世の風景を見つめてみよう。
「その世とこの世」(谷川俊太郎 ブレイディみかこ著 奥村門土絵)岩波書店