退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「映画の木漏れ日」川本三郎著

私が働いている学校でも大谷選手のグローブが大きな話題になっています。

1年生の教室では、先生が子どもたちに説明していますが、よく伝わっていない様子です。

「もうすぐ大谷選手のグローブがきます」

「大谷選手が来るんですか?」

「違います。大谷選手は来ません。グローブが来るのです。」

放課後、保護者から電話がありました。

「実はお願いがあって電話をしています。大谷選手のことです。うちの夫がどうしても大谷を見てみたいと言っているので、学校に行ってもいいでしょうか?」

 

「映画の木漏れ日」川本三郎著 キネマ旬報社

1970年代から80年代にかけて、小説は村上春樹、評論では川本三郎が私の中心にありました。

自分が社会に対して抱いている違和感は何だろう。どうやってこれから生きていけばいいのだろう。そんな問いに対するヒントを彼らの文章から受け取っていたような気がします。

川本さんは、芸術映画とB級映画を水平な視点で語ります。

難解な映画を思いがけない視点から読み解いたり、B級映画が描く世界の中から光る場面を教えてくれたり。川本さんは私の映画鑑賞の師匠です。

弱者に対する温かい眼差しが川本さんの特徴です。子ども、女性、性的マイノリティーアフリカ系アメリカ人などに寄り添う姿勢が伝わってきます。

映画を始点として、文学、音楽、美術など様々な表現との関連が川本さんのエッセイで述べられています。

映画「ティファニーで朝食を」の主演はオードリー・ヘップバーンではなく、マリリン・モンローを望んでいたのが原作者のトルーマン・カポーティ

カポーティはこの小説が「甘ったるい恋愛映画」になっていたので怒った。

しかし、結果的にこの映画は大ヒットして、ヘップバーンの代表作となる。

今、この映画を見返してみると、自由を求めて懸命に生きようとする女性の姿がよく描写されていると感じます。

私はこの映画に出てくる日本人の名前が「ユニオシ」となっていたのがずっと気になっていました。そんな名前の人は聞いたことないですよね。

この本を読んでその謎が解けました。

この「ユニオシ」のモデルは、当時ニューヨークに住んでいた画家の国吉康雄。国吉と「ユニヨシ」。そうだったのか!