退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

対話力の第一歩は「続けること」

教師が子どもたちに一方的に説明するだけの授業ではなく、子どもたちが自ら学ぶスタイルの授業への転換が求められています。
子どもたちが主体となって学ぶための基礎となるのが「対話」です。
日々の授業の中に対話を取り入れるにはどうすればいいのでしょう。
私が今までに教室の対話を観察して気づいたことは、対話がすぐに終わってしまうことです。
課題は「対話が続かないこと」です。
対話ができるようになることの最初のステップは、続けること、途切れないようにすることです。
そのためには、自分が質問して相手が答えたことに、更に質問を続けることができなくてはいけません。
話題についていくつか質問を考えておけばよい準備になります。
相手の回答に応じてその場で新たに質問を考え出すことも必要です。
相手が答えた内容をリピートして確認したり、共感したりすることも大切です。
それができるようになれば、相手の言葉を自分の考えの中に組み込んだり、言い換えたりすることもできます。
教師が例を示したり、子どもたちの良い対話をほめたりしながら、対話の力を伸ばしてあげましょう。

参考文献「『繰り返し』で子どもを育てる 国語科基礎力トレーニング」土居正博著 東洋館出版社  「読む・書く・話すを極める 大人の言語スキル大全」齋藤孝著 KADOKAWA

 

厳しいチェックでやる気を高める

子どもたちが漢字ドリルに書き込みをして、教師に見せにきました。
さあ、これをどのように評価するか。
その基準の設定は初任者にとって難しいところです。
少し間違いがあっても、字のバランスがとれていなくても、その子が一生懸命に書いたものだから、と考えることがあるかもしれません。
厳しい指導よりやさしい注意の方がいいのでしょうか。
しかし、よくあることは、本当はもっとできるのに、その力を十分に発揮させていないということです。
めざすべきは、教師は厳しく細かいチェックをしているのに、子どもたちは逆に奮起して、明るく何度もチャレンジを繰り返しているという状態です。

厳しくチェックすることで、子どもたちのやる気に火をつけて、休み時間や給食準備時間にまで、「先生、見て下さい!」と言われるようになることを目指しましょう。
教師にドリルを差し出すときの作法(向き)、なぞり書きは少しもはみ出ていないか、雑なところはないか、とめ・はね・はらいは正しいか(敢えて)、字が薄くないか、小さくないか、はみ出していないか、長短のバランスなど、徹底的にチェックします。
それができていたら、一つ漢字を選んで「空書き」で書き順をチェックします。
その声も動きもはっきりしていなければ合格にはなりません。
できないときは励ましたり、それまでの努力を認める声かけをしたり、何よりも明るい雰囲気になるよう心がけましょう。
そして、合格したときは一緒に喜び、大いにほめてあげるのです。
チェックを甘くするのではなく、厳しくすることでやる気を高めるようにしましょう。
子どもの意欲を高めるには、学習に挑戦的な部分が必要です。

脳科学の専門用語に「偶有性」という言葉があります。
この偶有性とは、セキュア(予想できること)とチャレンジング(新しいこと)のバランスがとれている状態です。
勉強では、セキュアがチャレンジングより大きい状態、つまり、簡単に解ける問題ばかりだと、単調な作業のように思えてくるのであきてしまいます。
反対に、チャレンジングがセキュアより大きい状態、あまりに難しすぎると、どこから手をつければよいのか分からなくなり、嫌になってしまいます。
だから、授業では子どもの反応を見極めながら、この両者のバランスをとることが大切です。


参考文献「クラス全員が熱心に取り組む!漢字指導法 学習活動アイデア&指導技術」土居正博著 明治図書出版  「脳を活かす勉強法 奇跡の『強化学習』」茂木健一郎著 PHP研究所

音読でしっかり声を出させる

なぜ音読の指導が大切なのでしょう。
はっきり言えることは、音読ができなければ文章の詳しい読み取りはできないということです。
文章の意味が分かっているかどうかは、音読させたら分かります。
どこで切るのか、どこを強調するのか、それができる子は文章の理解ができています。
正しく読めない子は文章の意味が分かっていないのです。
音読の大切さを、まず教師が理解し、それを子どもたちに伝えましょう。

低学年では音読の指導に時間をとって、丁寧な指導が行われます。
しかし、学年が進むにつれて、読み取る時間はたくさんとっても、音読の指導はほとんどなくなります。
正確に読むことができていない子が何人もいる状態で、読み取りの話し合いに長い時間をとることは、本当に正しいことなのでしょうか。
音読を宿題に出すだけでなく、もっと授業時間内に組み入れるべきです。

音読でまず大切なことは、しっかり声を出させることです。
簡単そうで、実はこの指導が難しい。
やさしく励ますばかりでは声は大きくならないし、叱ってもうまくいきません。
しっかり声を出すことへの意欲を高めることが大切です。
そのためには「刺激」を与えることが有効です。
できていないときはきっぱりと「ダメ!」と言います。
一人だけでなく、多くの子を「不合格」にしながら、何度もチャレンジさせ、合格する子が少しずつ増えていく、という状況をつくれば意欲は高まります。
テンポよく明るい雰囲気で指導し、できない子へのフォローもあれば、厳しい指導でも子どもたちは熱中して取り組みます。
このような指導を通して、学力を高めると同時に、明るく前向きな学級の雰囲気をつくりましょう。

 

参考文献「『繰り返し』で子どもを育てる国語科基礎力トレーニング」土居正博著 東洋館出版社、「読む・書く・話すを極める 大人の言語スキル大全」齋藤孝著 KADOKAWA

 

ショックを与える「聞くこと」の指導

小学校の「話すこと」「聞くこと」の指導では、まず「聞くこと」の指導に重点を置きます。
小学生、とくに低学年は「聞くこと」がほとんどできません。
自分のことを一方的に話して、相手の話を聞こうとしない子がたくさんいます。
それを単に「しっかり聞きましょう」「よく聞きましょう」と指導しても効果はありません。
聞かせるためには、「自分は聞くことができていない!」というショックを与えて、聞かなくてはならない状況をつくり出すことです。
はじめは短い文を短い時間で聞かせて、それを再生させます。
スモールステップで少しずつ難度を上げて「聞く力」を鍛えましょう。

人の話を聞いて分かったつもりでも、「どんな話だった?」と聞かれたら、再生できない人がほとんどです。
齋藤孝先生は「『再生方式』をあらゆる授業で徹底すべき」と強調しています。
「再生」させることを丁寧に指導することで、「聞く力」を育てることができます。
「教師の重要な説明が終わった後、その内容を子どもに言わせる」
「1時間の授業の終わりは、子どもに「まとめ」を発表させる」
これを毎日繰り返し、少しずつ「よい聞き方」に気づかせます。
その過程でメモの必要性にも気づき、「何を書けばいいのか」「何を書かなくていいのか」を理解していきます。
高学年になれば、自分だけの気づき、自分の生活経験とつないだ思考のメモなどもできるようになります。

土居正博先生の活動実践例を紹介します。
「一文」聞き取り活動
活動内容
「『主語くじ』短文づくり」をした後、代表の子どもに読ませる。それを聞き取り、発表する。
手順
①ノートに「○○が××する」という文をたくさん書かせる。
②立候補させて代表を一人決め、読ませる(聞いている子には、メモを取らせると効果的)。
③「今、言ってくれた文をひとつでも言える人?」と聞き、言わせていく。
④すでに言ったものが出た場合は「アウト!」、そうでない場合は「セーフ!」と言って盛り上げる。
活動のポイント及び解説
「単語聞き取り」でしっかり指導しておけば、あとで再生させることは「予告なし」でできます。
代表に立候補させることで、「自主性」「やる気」を伸ばすこともねらいましょう。

参考文献「1年生担任のための国語科指導法」(土居正博著) 「話し上手 聞き上手」(齋藤孝著)

 

国語「書くこと」の指導

若い頃、作文単元の研究授業に取り組んだとき、「想」の発展、構成、推敲から「意欲の継続」まで、全時間の手立てを丁寧に準備しました。
そのときはよい作品が多く完成して、コンクールで賞を獲得することもできました。
ある程度、よくできた指導だったと思います。
しかし、振り返って、子どもたちに本当の「書く力」をつけることができたのか、と考えると疑問です。
その後、私は指導方法を変えて、とにかく毎日たくさんの文を書かせることにしました。
気負わず、構えることなく、文章を綴るように教えたのです。
教師からのコメントも負担にならない程度にしました。
評価のポイントを絞り、すぐに子どもに返却することを心がけました。
すると、書くことを楽しむ子どもが増えたのです。
その中から、コンクールに入賞する作品も生まれました。
教師も子どもも気負わずに多くの文章を書かせた方が「書く力」を高めることができます。
目指すのは「歩くように、呼吸をするように、文章を書く子ども」です。

低学年では、書くことの楽しさを感じさせることが第一です。
「書くことは楽しい」「もっと書きたかった」という言葉が子どもたちから聞こえてくる指導を目指します。
そのためには、字の間違いや丁寧さについて強く指導することがないように配慮します。
「丁寧さ」「正確さ」は別の時間にそれをめあてにした指導を行うのです。
どれだけたくさん書けたのかを、文の数や行数などで可視化して、満足感や達成感を得ることができるようにします。
低学年の作文指導では「質より量」「書く楽しさ」が重要です。

土居正博先生の「書くこと」の活動例を紹介します。
「主語くじ」短文づくり
〇活動内容
その日につくる短文の「主語」をくじ引きで決め、文をたくさん書く。
〇手順
①主語(とり、さる、人など)をたくさん子どもたちから出させ、くじ引きにしておく。
②くじ引きを引き、その日につくる短文の主語を決定する。
③5分間タイマーで文をたくさん書かせる。
④タイマーがなったら隣の子と交換し、文の数を数え、全体でいくつ書けたか確認していく。
〇活動のポイントおよび解説
一文づくりを毎日の授業の中に取り入れる。一文を確実につくれることは、文章を長くかけることにつながる。はじめは1~2文くらいしか書けなかった子が5文くらい書けるようになる。多い子は15文くらいかけるようになる。

参考文献「1年生担任のための国語科指導法」(土居正博著) 「作文で鍛える」(野口芳宏著)

「話すチカラ」(齋藤孝、安住紳一郎著 ダイヤモンド社)

本の冒頭に「15秒以内で短く話す」のポイント提示があります。
「教師の話は長い」と揶揄されますが当たっています。
特に最近は、子どもたち同士の「対話」が奨励されているので、教師の話を簡潔にすることは必須課題です。
それにしても「15秒以内」とは驚きましたが、人間が集中できるのはそもそもその時間くらいなのです。
ましてや、小学生には更に「時短化」の徹底が必要でしょう。
30秒や1分あれば、15秒単位で構成を考え、それぞれ最後の3秒は適切なまとめを意識すること。
アナウンサーも俳優も、最後の3秒のまとめが上手なのです。

余計な言葉を入れないことを強く意識する。
私は毎日オンライン英会話のレッスンを受けていますが、講師から何度もこの指摘を受けています。
言葉が出てこないときに何度も「アー」「エー」のような無意味な声を発していたのです。
自分が話すときのクセに気づくことが肝心です。
教員には自分の授業を撮影することがオススメ。
自分で自分の指導する姿を見るのはつらいけれど、これによって多くの気づきが得られます。

人を引きつける話のための工夫として、「抽象・具体」「ワイド・ナロー」を意識する。
この「ワイド・ナロー」と言えば、小学校教師は「アップとルーズで伝える」(国語4年生説明文教材)を思い出します。
サッカーの中継では、ゴールの瞬間は歓喜する選手のアップが強調され、スタジアム全体のルーズ(遠景)で試合は終了します。
アップかルーズを選んだり、取材したものを選んだりして、受け手が知りたいことや送り手が伝えたいことを表現します。
話すときもこのようなカメラのアップとルーズ、ワイド(広い)とナロー(狭い)の使い分けが大切です。

これからテレビを見るときは、齋藤孝先生と安住紳一郎TBSアナウンサーの「話すチカラ」を見つけることも楽しみになりそうです。

特別支援を要する子への配慮

昨日、初任の先生から相談を受けました。
前担任からの引継ぎの中で、「授業に集中できずに教室を飛び出すことがある、という子がいたので心配になった」ということです。
特別に支援が必要な子どもへの配慮についてまとめてみます。

①「その子の特性を理解するようにする」
特別に支援が必要な子は、一人ひとりが多様で、これだけですべてうまくいくというような指導法はありません。
強いこだわりを持っている場合も多いので、急に落ち着かなくなったり、不機嫌になったりすることがあります。
何が原因なのか、きっかけなのか、その子の思いを丁寧に聞いてあげましょう。
その子を不安にした要因を取り除いて、対処の方法をその子と一緒に考えます。
クラスの他の子たちにもそれを分かってもらうようにすることも大事です。

②「二次障害が起きないようにする」
よくない行動はやめさせて、適切な行動がとれるようにしなくてはいけません。
しかし、急ぎすぎたり、強い指導が続いたりすると、かえって不安定になることがあります。
今までになかった不適応の言動が増えることさえあります。
子どもの反応を細やかに見取りながら、改善を急ぎすぎないようにして、二次障害が起きないようにしましょう。

③「学級全体の指導が後回しにならないようにする」
よくありがちなことは、支援が必要な子だけに対応して、他の子たちが待たされて騒がしくなることです。
他の子たちにとっては、何もすることがなくて待たされていたのに、教師から注意を受けては不満も起きます。
このようなときは、まず、学級全体への対応を忘れないことが大事です。
適切な指示を他の子たちに伝えてから、その子に対応するように心がけましょう。

④「行為をとめるのではなく、ときにはそのままにしておくことがあってもいい」
危険なことをしていたり、他の子に手を出したりしている場合はすぐに止めなくてはいけませんが、自分で声を出しているだけのときなどは、あえて止めずに授業を進めることがあってもいいと思います。
注意されると更にエスカレートすることがあるのです。
声を出して自分に注意を向けようとしているだけのときは、逆にそのままにしておく方が本人にとっても周りの子にとってもいいでしょう。
その後、自分で気づいて静かにすることができた瞬間をとらえてほめてあげましょう。
そんな様子を他の子たちが見ることができれば、その子との適切な接し方を学ぶこともできます。

参考文献「初任者でもバリバリ活躍したい!教師のための心得」土居正博著 明治図書