退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

Forever Young

30年前に2年間教えた子どもたちとの同窓会。
もうみんな40歳です。
愛知、宮崎など、遠くから参加した子もいます。
ジャズミュージシャンとして活躍した後、現在はマイノリティーのための会社を起業した子がいます。
ニューカレドニア日本語教師をした後、フランス人と結婚した子もいます。
SNSの発達のおかげで、彼らとは節目ごとに連絡がとれました。

現在の仕事のこと、子育ての悩みなど、いろんな話をしました。
教師という仕事をしていてよかったなあ、としみじみ感じました。
たくさんの子のいろんな人生に関わり、喜びを共有できるからです。
また会いたいと思う人がたくさんいることのうれしさ。
みんなありがとう。また会おう!

May your hands always be busy
May your feet always be swift
May you stay, forever young    Bob Dylan
いつも夢中になれるものを持っていますように
いつも足どり軽やかにしなやかに
あなたがいつまでも若くありますように

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新宮 2019年8月

 

「経験から学ぶ」とは「失敗から学ぶ」こと

教師の仕事の楽しさとは何でしょう。
授業は難しいものです。
研究授業をして、うまくいったと感じることはほとんどありません。
たいていは、自分で計画した通りには進まず、落ち込みます。
まあ、うまくいかないことが多いから、少しでも手ごたえを感じることができたときの喜びが大きいのかもしれません。
雑誌「教育音楽」の眞鍋なな子先生「わたしが教師になった理由(わけ)」の言葉に深く共感しました。

「よく『経験を積む』と言いますが、経験って『失敗』のことなんですよね。失敗はして当たり前だし、『失敗したらダメ』ではなく、失敗したからこそ次にやるべきことが分かると思います。子どもへの接し方も『叱り過ぎて失敗した』と『ほめ過ぎて失敗した』の往還の中でつかめてくるものです」 眞鍋なな子(「教育音楽」2019年8月号)

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香椎 2019年7月

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

高橋源一郎さんのラジオ番組に著者のみかこさんが出演していたのでこの本を知りました。
博多駅紀伊国屋書店で買ってきて、昨日あまりの面白さに一気読みです。
妻に本の感想を伝えていたら隣で聞いていた中二の娘がもう読み始めていました。

日本人の母である著者とイギリス人の夫、その息子が中学に入学してから起こる様々な出来事を描いています。
息子が進んだのは元底辺中学校。
予期しない出来事が次々に起こり、そのたびに驚き悩み考え続けます。
その中学校では、現在イギリスが直面している貧困、差別、分断などの課題がむき出しで迫ってきます。
それでもこのファンキーな家族は問題から逃げることなく格闘する姿が素敵です。
悲しい現実に怒るばかりでなく、時にはクールに笑い飛ばしながら前進します。
読者も一緒に泣いたり笑ったりしながら現代社会の問題について考えさせられるおすすめのノンフィクションです。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」ブレイディみかこ

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映画「アマンダと僕」

KBCシネマで「アマンダと僕」鑑賞
久しぶりのフランス映画
谷川俊太郎さんのコメントを読んで見たくなった映画

長い教員生活で出会った悲しい目をした子どもたちを思いだした
生きる希望を人に与えることはできるのだろうか
生きる力はどんなきっかけで生まれるのか
希望や勇気を人に与えることほど難しいことはない
そこに法則や特効薬はない
しかし
ふとした何気ない言葉
あるいは言葉にならないしぐさや表情から
小さな出来事や景色の変化から
勇気や希望を得ることがある
生きる力が生まれることがある
そんな美しい瞬間を見た

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ホノルル 2018年8月

 

深い思考をもたらす対話力

今、小学校ではペアやグループの交流が盛んに行われています。
どのような交流の姿を目指せばいいのか教師はみんな考えています。
目と目を合わせる、体を向け合う、反応する、笑顔で、などの「型」の指導だけでは、表面的な交流になってしまいます。
交流によって、二つの考えが合体して、新しい考えが生まれる、などの内容的な高まりを目指しても、そのような交流場面を創るのは容易ではありません。

規則正しいキャッチボールのような対話をめざすのでなく。
むしろ、ゆっくり考えながら進んだり、止まってしまったりする対話でいいのです。
異なる考えを無理に一つにまとめる必要はない。
それよりも、お互いの考えの小さな違いを大切にする。
相手の考えを尊重しつつ自分なりの言葉を大事にする。
同じ概念を違う言葉で表現できればそれはむしろよい学習材料になります。
重要なことは対話によって自分の考えを深めることです。


「深い思考をもたらす対話力は、授業での活用だけでは効果的に高まりません。
日常的に次に挙げる活動を意図的にさせておくことが大切です。
〇お互いに小さな差異に気づくこと、多様な見方・考え方を習慣づける
〇なぜ対話するのか、どんな配慮や工夫をするとよいのか、子どもたちに説明しておく
〇さりげないやさしさの関係、語れない子に話しかけるなどの子ども同士のお節介の関係をつくる
〇二人または小集団でのぼそぼそとした話し合いを大切にする。聴くことの大切なことに気づかせる
〇多弁な子には、友だちが話せる配慮を工夫させる
〇寡黙な子には臆せず語る勇気を育む
〇創造的な失敗を奨励する。その姿勢や勇気を褒める
〇失敗に落ち込まない自己復元力を高める
〇議論が行き詰ったときに対応法を習得させる
〇発想力を豊かにする習慣をつける
〇お互いの潜在能力への敬意をもつように配慮する
〇一人ひとりがヒーローになる場面をつくる。このため様々な知識や体験を出させる
〇なかなか考えがまとまらない、悩むこともよいことだと気づかせる」
多田孝志(「国語教育」2019年7月号) 

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ハノイ 2018年3月

 

泳ぐ人 The Swimmer

はじまりはムーンライダーズの「スイマー」
アルバム「NOUVELLES VAGUES」(1978年)の1曲目
「泣きながら泳げスイマー」という切ない歌詞に心をつかまれました
このタイトルの映画があることを知りました

次は映画「泳ぐひと」(1969年)
NHKBSの放映です
話の内容を全然知らないまま見て驚きました
はじめに提示される華やかな主人公の飾りが少しずつはがれ
最後に見る人に真実を知らせます
Swimは混乱すること漂うこと
主演のバート・ランカスターは製作にもかかわっています

そして「泳ぐ人」ジョン・チーヴァー 村上春樹
「うまいなあ」と感心して2回読みました

「そこにあるのは巧妙に角度を変える無駄のない的確な描写であり、どこまでも痛切な、それでいてある種の優しさを漂わせる、洗練されたアイロニーの感覚だ。作家のきりっとした立ち姿と、まるで上等な絨毯を床に広げていくような物語の見事な展開ぶりに読者は魅了される。象徴はただの象徴に終わらず、比喩はただの比喩に終わらない」村上春樹

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映画「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」

KBCシネマで妻と映画
元ミュージシャンのお父さんと医師を目指す娘の物語
饒舌な映画が溢れる今
素材をさりげなく提示する語り口がいい

ニューヨークのレッドフックという街をはじめて知りました
交通も不便で特別有名なところもない
だけど行くと何かホッとする場所
この映画もそんなレッドフックのような味わい深さがあります
さわやかな余韻を残すラストも心に響きました

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ホノルル 2018年8月