退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「料理大好き小学生がフランスの台所で教わったこと」 ケイタ著

先日、フライパンを買いにイオンへ行って驚きました。
売っているのはすべて何とか加工のフライパンばかり、何も加工していないものはなかったのです。私がほしいのは普通の鉄のフライパンです。
何とか加工のフライパンは、使いはじめは焦げがつかないで便利なのですが、だんだんとそれが剥がれていくにつれて、逆に焦げ付きやすくなります。
反対に普通のフライパンは、はじめは焦げ付きやすいのですが、使ううちに油が表面になじんできて、焦げ付きにくくなります。
だから私は普通のフライパンがいいと思っているのですが・・・。
さて、今回は本の紹介です。
 
「料理大好き小学生がフランスの台所で教わったこと」 ケイタ著 
 
この本の著者、ケイタくんは小学校6年生。幼い頃から(何と11か月から!)包丁を持って野菜を切ったりしていた。
親は子どもが「やってみたい!」ということを最大限尊重した。
今では料理はもちろん、何か作るのが大好きな子どもに成長した。
長野県の山中に住んでいて、現在は大工さんに教えてもらいながら自分の家を手作業で建てている。
母親は英語教師をしていて、家には世界各国からいろんな人がボランティアとして滞在しながら畑仕事を手伝ってくれる。
その中に料理を作ってくれる人もいるので、ケイタくんのレシピノートは増えていく。
そのケイタくんが今年のはじめ(コロナの直前)、フランスへ行って、今まで家に来てくれた人たちの家を訪ねたのがこの本。
フランスと日本の食文化の違い、フランスの田舎の暮らし、家族の習慣などが子どもの視点から鮮やかに切り取られている。
アルプスのスキー場に雪が少ないことから地球温暖化を考え、黄色いベストの人たちのデモを見て、人々の怒りの理由について考える。
 
この本は実にお得。
料理が好きな人はレシピ本として読めるし、親や教師は教育についての気づきを得られる。
子どもがやってみたいという思いを大切にすること、それが出発点。
教えることは最低限にとどめ、見守ること、待つこと。
多様な人に出会わせること。たくさん体験させること。
 
この本は作家の高橋源一郎さんから教えてもらいました。
 
高橋源一郎飛ぶ教室NHKラジオ第1金曜日午後95分から955分です。
 
春から秋のとてもいそがしい時期は、ボランティアの人に来てもらう。日本だけでなく、世界のいろんな国からも受け入れていて、これまでに5つの大陸から130人以上の人が来てくれたよ。
ぼくの家に泊まって、毎日いっしょにごはんを食べて、畑仕事をしたりいろんなことをするから、その人たちも、まあ家族みたい。
料理を作ってくれる人もいる。それで、ぼくのノートには世界各国の料理のレシピが集まっているんだ。
フランス人のジェレミーはそんなボランティアのひとりで、ぼくが8歳のときにうちに来て、4か月もいっしょに暮らした。
ジェレミーは背が高くて、メガネはかけてなくて、日本語とフランス語と英語をしゃべる。腕のいいシェフで、有名ホテルのレストランで働いてきたんだって。たくさん料理を作って、作り方も教えてくれた。
でも、日本ではバターの値段がとても高いけれど量が少ないと言っていた。フランスのねぎが手に入らなくて、日本の長ネギで代用するので、日本風のフランス料理になってしまうとも言っていた。
 
ジェレミーの料理はとてもおいしかったから、ぼくはフランス料理に興味がわいた。もともと料理は好きだったけど、お菓子を作る楽しみを教えてくれたのはジェレミーだ。今では、家族の誕生日ケーキは、たいていぼくが作っているよ。 本書より

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クリスマスの思い出 トルーマン・カポーティ作 村上春樹訳

私が担当している小学校は、2学期制のところと3学期制のところがあります。2学期制の学校は12月25日の終業式に向けて、通信表の作成を始めています。教師たちは夜遅くまで、休日も仕事しています。世界の他の国と比較して、日本の教師は忙し過ぎます。しかし依然として教師の負担軽減は進んでいません。まずは2学期制の導入が効果的です。

さて今日は、米国の作家カポーティの短編小説を紹介します。

 

クリスマスの思い出 トルーマン・カポーティ作 村上春樹

 

村上春樹は高校生のときにカポーティの文章を英語で読んで、自分はこんなに上手い文章は書けない、と感じたらしい。彼が29歳まで小説を書こうと思わなかったのはこのことが原因だと述べている。

村上にそれほどのショックを与えたカポーティだが、その一生は悲しい。不幸な少年時代、ニューヨークに出てきて若くして成功し、セレブとして華やかな生活を送るが、晩年は創作に悩む。最期は親しい人たちとの交流も自ら壊してしまい、薬物とアルコールに溺れて亡くなった。

 

この物語は、主人公「僕」の回想の形式で書かれている。「僕」は家庭の事情で親戚の家で暮らしている。その家には僕と同じような境遇でこの家に住んでいる60歳の女性(いとこ)がいる。二人は温かい家族からも社会からも遠くにいる。光の当たらない者同士、心を通わせていた。

僕と彼女にとって、一年間で一番楽しいときがクリスマス。この日のために1年間少ない小遣いを貯めてフルーツケーキを焼くのだ。そのケーキは大統領やこの1年、言葉を交わした人たちに贈られる。二人は大統領のクリスマスの食卓にこのケーキが並べられている様子を夢見る。

二人もプレゼントを交換するのだが、それは手作りの凧。本当は自転車を買ってあげたいのだができない。彼女は僕に言う、「もし私にそれが買えたならね、バディー。欲しいものがあるのにそれが手に入らないのはまったくつらいことだよ。でもそれ以上に私がたまらないのはね、誰かにあげたいと思っているものをあげられないことだよ。」

しかしこの小さな幸せも長くは続かない・・・。

クリスマスが近づくたびに読みたくなる小さな灯のような物語。

 

「布団の中で目を覚ましたときからもうわかっていたよ」と彼女は言う。こうこなくっちゃと目を輝かせて、窓辺からこちらを振り向く。「郡庁舎の鐘の響きがきりっとして冷やっこかったもの。鳥の声だって聞こえなかった。そうだよ、みんなもっと暖かいところに移っちゃったんだよ。ねえバディー、いつまでもパンなんて食べていないで私たちの荷車をもってきておくれよ。私の帽子も捜しておくれ。これから三十個もケーキを焼かなくちゃならないんだよ」

毎年これが繰り返される。十一月のある朝がやってくる。すると僕の親友は高らかにこう告げる。「フルーツケーキの季節が来たよ! 私たちの荷車をもってきておくれよ。私の帽子も捜しておくれ」と。まるで自分のその一言によって、胸おどり想いふくらむクリスマス・タイムの幕が公式に切って落とされたように。 「クリスマスの思い出」より

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「ソルハ」 帚木蓬生 あかね書房

全国的に新型コロナウイルス感染者が増加しています。福岡市でも小学校で教員や子どもの感染が確認されて、対策の徹底が行われています。常に換気をよくするために窓を開けているので、教室も職員室も寒いです。来年の冬までには沈静化しているといいのですが。

さて、今回は本の紹介です。

 

「ソルハ」 帚木蓬生 あかね書房

 

もう5年以上前になるが勤めていた学校の職員みんなで箱崎にあるイスラム教のモスクを見学させてもらったことがある。そこのイスラム教の信者の方にお話を聞かせていただいた。信者の方はとても穏やかで理知的だと感じた。実際に行って話を聞く経験は貴重である。それ以来、私のイスラムに対する関心は続いている。偏見をなくすには実際に会って話すことが一番。

この物語の主人公ビビはアフガニスタンのカブールに住む5歳の女の子。そのビビが2002年、15歳になるまでの出来事が描かれている。ビビが9歳のとき、カブールはタリバンによって支配され、その後、2001年にアメリカの貿易センタービルへのテロ攻撃が起きる。その報復としてカブールの町は米軍の空爆を受ける。カブールがタリバンから解放され、ビビの学校が再開されたとき、ビビは15歳になっていた。読者はビビの成長を見守りながらアフガニスタンの現代史を学ぶことができる。子ども向けに書かれた物語だが、大人が読んでも学ぶことの多い本である。

著者の帚木蓬生さんは、福岡県中間市で精神科開業医として活動しながら1年に1作のペースで小説の執筆を続けている。

 

「この物語はまた戦争を扱っています。私たち大人は、もうたいていの人が戦争を経験していません。戦争はおとぎ話の世界に思え、世界のいろいろな地域で紛争や戦いがあっても、自分たちとは無関係の対岸の火事に思いがちです。これからの21世紀、自分の国だけが平和であり続けるのは不可能です。再び平和を取り戻すには、長い時間と大きな犠牲が必要です。私たちは平和な国にいるからこそ、大人も子供も戦争の悲惨さに敏感でなければならないのです。

どうぞ、子供たちと一緒に、この物語の頁を開いて下さい。」(かつて子供だった大人のみなさんへ 帚木蓬生)本書より

※「ソルハ」の意味はダリ語アフガニスタン公用語の一つ)で「平和」

 

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「漢字指導の新常識」 土居正博 

「漢字指導の新常識」 土居正博 学陽書房

 

漢字の指導は時間をかけている割には効果が上がっていないことが多い。宿題として、「ノートに2ページ書いてきなさい」などと言われて練習しているが、このような機械的で単調な作業は、子どもにとって苦痛でしかない。意欲も高まらない。多くの教師は漢字の指導はそういうものだと思っていて変えようとしない。これは何とかしなくては。

この土居正博先生の漢字指導は、本当に素晴らしい。漢字50問テストは抜き打ちでも満点続出。子どもたちは夢中になって漢字学習に取り組み、給食時間にも漢字のことが話題に出るようになり、休み時間には「先生、漢字の練習をしていいですか?」と言ってくるようになる。

漢字指導で大切なことは学習の仕方を徹底して教えること。自分でどんどん進められるようにしてあげること。もちろん教師は要所でのチェックは欠かさない。そして、自分で自分をテストできるようにもする。まだ習っていない漢字も自分で学習することになる。「上限」を取り払うことで、子どもたちは学年以上の漢字の力をつける。この指導法では、子どもたちは正確に丁寧に書くことも要求される。厳しいのだ。しかし、だからこそ子どもたちは本気になって取り組む。

漢字指導を通して子どもたちに粘り強さ、自主性、計画性、丁寧さを身につけさせることができる。「漢字を通して人間を育てる」とまで言い切る。著者は1988年生まれ。ということはまだ32才! すでに多数の著書がある。すごい人が現れたものだ。この本が一人でも多くの教師に読まれることを願っている。

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「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」梯(かけはし)久美子 

なぜサハリン(樺太)に惹かれるのだろう?

多くの人が集まる華やかな場所ではなく、地図の上でも歴史の流れの中でも、片隅にあるものが気になる。

私が今いちばん気になるのがサハリン。

宮沢賢治はこの地をサガレンと呼んだ。

ロシアにとっては遥か極東の地、帝政時代の流刑地。日本からは北海道よりも更に北。戦前は日本領だったところ。

現在この地には、日本の工場や鉄道の跡が残っている。私は、歴史や人間について考えるとき、このサハリンのような辺境から本当の姿が見えてくるような気がする。

この本はサハリン訪問のルポである。

梯さんは、林芙美子北原白秋宮沢賢治らの紀行文や詩などの記述をたどりながらこの地を旅する。昭和天皇(皇太子のとき)、チェーホフ村上春樹も登場する。

 

宮沢賢治チェーホフの関係も興味深い。チェーホフがサハリンを訪れたのは1890年、その33年後、1923年に賢治がこの地を旅している。

賢治にはチェーホフが登場する詩がある。関心があったのだろう。

チェーホフの「サハリン島」には目を引くエピソードがある。

それはチェーホフがサハリンに来る20年前にこの地で暮らした一人のロシア人のこと。

M・S・ミツーリというその農学者は、学者でありながら道徳タイプ、勤勉家で夢想家。

まさに賢治のような人物だった。

チェーホフはこのミツーリという人物に好感を持ち、詳しく調べている。

ミツーリ、チェーホフ、賢治。サハリンを舞台に時を隔てて3人の人生が交錯する。

しかも、ミツーリは賢治とよく似た人物である。

何という不思議なめぐり合わせだろう。

 

この本は、宮沢賢治の詩を読み解くための優れたガイド本にもなっている。

私は賢治の童話は好きだが、詩は苦手だった。

しかし、この本を読みながら、まるで霧が晴れるように賢治の心の風景が見えてきて驚いた。

賢治のサハリンへの旅は妹を亡くした後の傷心の旅であった。

賢治にとって妹トシは最高の理解者であり伴走者。

この度の前半、賢治は妹の死を受け入れることができずに苦しみもがいていた。

それが、旅の中で少しずつ癒され明るさを取り戻していく。

それを私たちはこの本を通して追体験できる。

私は梯さんのファンになった。

「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」「原民喜 死と孤独の肖像」「廃線紀行 もうひとつの鉄道旅」「昭和二十年夏、僕は兵士だった」などの著作がある。次はどれから読もう。

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「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」梯(かけはし)久美子 KADOKAWA

 

「人間の土地へ」小松由佳著

「人間の土地へ」小松由佳著 集英社インターナショナル

 

著者の小松由佳さんは、2006年に日本人女性として初めてK2に登頂した。K2は世界第2の高峰。登山者の25パーセント、4人に一人が命を落とすという世界で最も困難な山である。小松さんはK2山頂に到達した後、登山から離れ、今度はシリアの取材を始める。イスラムの世界に始めは戸惑いを感じるが、やがてその魅力に強くひかれ、シリアの青年と結婚する。

 

何のために本を読むのだろう。私はK2にもシリアにも行けない。しかし、本を読むことでK2登山の厳しさを感じ、シリア内戦の現実を見ることができる。この本の中で、小松さんが深くかかわったアブドュルラティーフ一家は、大家族の穏やかで幸せな日々が内戦によって無残にも奪われる。この本を読んで、シリアの人々の深い悲しみが自分にも伝わってきた。イスラム世界は西洋諸国や日本から見ると不合理と思えることも多い。しかし、そこには豊かな文化があり、人々の幸せがある。今、私たちに必要なのは、自分とは違う文化や考え方をもった人たちとどのように折り合いをつけ、生きていくかということ。この本が多くの人に読まれることを願っている。

 

私は季節をまたいでシリアへ、砂漠へ、アブドュルラティーフ一家のもとへと赴いた。イスラムという信仰を軸に、ゆったりと生きる人間の姿と、砂漠というむき出しの自然が新鮮だった。砂漠を歩き、空を見上げると、地球を自分の内側に感じることがあった。確かにこの星の上に生きているという感覚。それはヒマラヤの山での感覚にとてもよく似ていた。「人間の土地へ」より

グーグルネストWi-Fiルーター

先週は給食を食べながらM先生からグルメ情報を伺いました。

小笹においしい韓国料理の店があることを教えてもらっていたとき、隣で聞いていた英語専科のT先生が「私、そこに行ったことがあります!」と店の様子を教えてくれました。

そこでT先生たちが食べたのはタコの踊り食い「サンナッチ」だったのです。

私は食べかけていたデザートの梨を落としそうになりました。

「それ!その料理の記事を見たばっかり!」

T先生からそのときの動画を見せてもらいました。

それがまた驚愕の映像!

何と、鍋の中でタコの足が暴れているではありませんか。

ネットで調べてみると吸盤が喉にくっついて窒息することがあるので気を付けることが書いてありました。

ううむ。皆さんはチャレンジする勇気ありますか?

さて、今日の記事は商品レビューです。

 

グーグルネストWi-Fiを購入しました。家の中のWi-Fi環境をつくるための機器(ルーター)とその中継点となる拡張ポイントのセットです。31,900円でした。

これを購入したのは、家の中の部屋によってWi-Fiがつながりにくい所があったからです。私の家は狭いマンションですが、それでも部屋によってWi-Fiが弱くなって困ることがありました。

このグーグルネストWi-Fiの仕組みはどのようになっているのでしょう。ルーターとは別に家の中の他の場所に中継を置くことでWi-Fi電波をつなぐだけでなく、お互いの電波が増幅して、網の目のように広がるようになっています。うちでは、ベースとなる機器(ルーター)をリビングに置き、もう一つを寝室に置きました。完璧とは言えませんが、Wi-Fiが安定してきたので満足しています。

追加の拡張ポイント(中継器)はスマートスピーカーになっていて、毎日使うのは目覚まし機能です。「OKグーグル、明日5時に起こして」と言えば「はい、5時にアラームを設定しました」と答えてくれます。

ネットラジオをストリーミングで聴くことができるのも便利です。私は毎日寝るときにWNYCというニューヨークの公共ラジオを聴きながら寝ています。

困るのは、妻や娘がおもしろがってグーグルに話しかけることです。でも、おかげでグーグルの隠れた能力を知ることができました。「OK、グーグル。怖い話を聞かせて!」「食堂の死体! しょくどうのした、い・・・」と、脱力系のギャグを披露してくれます。まあ、何と言うか、変な家族が一人増えたような感じです。