連日記録的な猛暑が続いています。
今日は近づく台風の影響で強い雨が降っています。
台風、大雨、水害などの原因である気候変動を今すぐ止めないと、人類絶滅の危機が迫っています。
今、できることはSDGsかな、と考えていたら、本書では冒頭でこの「持続可能な開発目標」がばっさり切り捨てられます。
政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで、気候変動は止められないのだ。SDGsはアリバイづくりのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない。
かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。
アヘンに逃げ込むことなく、直視しなくてはならない現実は、私たち人間が地球のあり方を取り返しのつかないほど大きく変えてしまっているということだ。
では、どうしたらいいのでしょう?
そんな問いに斎藤さんは丁寧に答えていきます。
目次
はじめに SDGsは「大衆のアヘン」である!
第1章 気候変動と帝国的生活様式
第2章 気候ケインズ主義の限界
第3章 資本主義システムでの脱成長を撃つ
第4章 「人新世」のマルクス
第5章 加速主義という現実逃避
第6章 欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
第7章 脱成長コミュニズムが世界を救う
第8章 気候正義という「梃子」
おわりに 歴史を終わらせないために
斎藤さんが「脱成長コミュニズム」の例として紹介しているのがバルセロナです。
バルセロナでは市民の力で、都市公共空間の緑化、電力や食の地産地消、公共交通機関の拡充、自動車や飛行機・船舶の制限、エネルギー貧困の解消、ごみの削減・リサイクルなど、二酸化炭素排出量削減に取り組んでいます。
ここでの強みは国際的な連帯です。
バルセロナは77の世界の都市と連携してアイデアを共有しています。
私は先日見たニュース映像を思い出しました。
自動車ではなく、歩行者を中心としたバルセロナ市の大胆な再開発が紹介されていました。
どうしてこんなことができるのだろう、と不思議に思ったことが、これを読んで分かりました。
この本が30万部も売れていることが大きな希望です。
格差と分断が広がる暗い社会に差し込む一筋の明るい光。
私も自分ができることから始めることにします。
コミュニティや社会運動がどんどん動けば、政治家もより大きな変化に向けて動くことを恐れなくなる。バルセロナの市政やフランスの市民議会の例が象徴的である。
そうなれば、社会運動と政治の相互作用は促進されていく。そのときこそ、ボトムアップ型の社会運動とトップダウン型の政党政治は、お互いの力を最大限に発揮できるようになるはずだ。「政治主義」とはまったく異なる民主主義の可能性が開けてくる。
ここまでくれば、無限の経済成長という虚妄とは決別し、持続可能で公正な社会に向けた跳躍がついに実現するだろう。閉ざされていた扉が開くのだ。
もちろん、この大きな跳躍の着地点は、相互扶助と自治に基づいた脱成長コミュニズムである。(本書P357「持続可能で公正な社会への跳躍」)