あけましておめでとうございます。
昨日、英会話のオンライン授業でこんな記事を読みました。
Researchers Find Fish Oil May Not Prevent Heart Problems
米国クリーブランド病院の医師たちが2017年6月から2020年1月までに1万3000人を対象に調査を行いました。それは心臓病や不整脈の改善に効果があると言われている魚の油、オメガ3に関する調査です。調査の結果、オメガ3は心臓病や不整脈の改善に効果があることを証明できませんでした。それどころか、オメガ3は不整脈のリスクを増大させることがあると分かりました。胃の病気を引き起こすこともあるそうです。
薬やサプリメントの摂取には十分な注意が必要ですね。
さて、今回は出口治明先生の本の紹介です。
「還暦からの底力」を読んで出口さんのファンになりました。
この本は400ページの厚い新書ですが、一気に読みました。この論点は以下のような問題です。
①日本の新型コロナウイルス対応は適切だったか
②新型コロナ禍でグローバリズムは衰退するのか
③日本人は働き方を変えるべきか
④気候危機(地球温暖化)は本当に進んでいるのか
⑤憲法9条は改正すべきか
⑥安楽死を認めるべきか
⑦日本社会のLGBTQへの対応は十分か
⑧ネット言論は規制すべきか
⑨少子化は問題か
⑩日本は移民・難民をもっと受け入れるべきか
⑫人間の仕事はAIに奪われるのか
⑭がんは早期発見・治療すべきか、放置がいいのか
⑮経済成長は必要なのか
⑯自由貿易はよくないのか
⑰投資はしたほうがいいのか、貯蓄でいいか
⑱日本の大学教育は世界で通用しないのか
⑲公的年金は破綻するのか
⑳財政赤字は解消すべきか
㉑民主主義は優れた制度か
㉒海外留学はしたほうがいいのか
いかかですか?どれもどんな答えがあるのか聴いてみたい問題ですね。
それぞれの項目には「基礎知識」として数字(データ、エビデンス)とファクト(事実)などが述べられています。あわせて「自分の頭で考える」として、「タテ=時間軸(歴史軸)、ヨコ=空間軸(世界軸)」で立体的に考えて、物事の実態や本質を見ます。
例えば、「日本は働き方を変えるべきか」では、「日本の労働生産性はずっとG7最下位」として以下の説明があります。
日本とヨーロッパのこの四半世紀を比べると、ヨーロッパは年1300から1400時間働いて年平均2.5%の成長を維持しています。一方、日本は正社員ベースで考えると2000時間以上働いて年平均1%しか成長していません。基礎知識のページでは日本人の労働時間は年間1644時間と紹介していますが、これはパートやアルバイトを含めての数字であって、実は正社員の労働時間はこの四半世紀、まったく減っていないのです。
2.5%と1%というとたった1.5ポイントの差と思うかもしれませんが、割合からすると2.5倍、とても大きな差です。しかも、日本の方が労働時間が1.5倍も長いにもかかわらずです。
要するに、先進3地域の中では日本がもっとも労働生産性が低い。OECDのデータに基づき日本生産性本部が比較統計を取り始めた1970年以来、実に半世紀にわたって日本の労働生産性は時間あたり・1人あたり共にずっとG7最下位を続けています。(G7=フランス、アメリカ、連合王国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)。いま日本人に働き方改革が求められている根本的な理由はここにあります。
出口さんの主張に説得力があるのは「数字(データ、エビデンス)・ファクト(事実)・ロジック(論理、理屈)」という3つの要素があるからです。
「気候危機(地球温暖化)は本当に進んでいるのか」では、日本の気候危機の感度が低い理由として以下のような説明があります。
日本人の意識が低いことには、メディアの責任も大きいと思います。ちょっと前の話で恐縮ですが、COP21が合意に達したとき、たまたま僕は世界の報道をザッピングするテレビ番組に出ていました。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、そのときモニターしていたすべての国の報道がCOP21を別格で取り扱い、他のニュースをほとんど流さなかったのに対して、日本ではほんの少ししか報じられませんでした。いかにメディアの感度が鈍いかということです。
ここでも、ヨコ=空間軸(世界軸)で立体的に考えているので、物事の実態や本質をはっきりとらえることができます。
巻末には「付録」として、「自分の頭で考える10のヒント」があります。
①タテ・ヨコで考える
②算数、すなわち数字・ファクト・ロジックで考える
③外付けハードディスクを利用する
④問題を分類する「自分の箱」をいくつか持つ
⑤武器を持った「考える葦」になる
⑥自分の半径1メートル圏内での行動で世界は変えられると知る
⑦「人はみんな違って当たり前」だと考える
⑧人の真贋は言行一致か否かで見極める
⑨好き嫌いや全肯定・全否定で評価しない
⑩常識は徹底的に疑う
私は、問題を分類する「自分の箱」をいくつか持つことが参考になりました。
何かの問題に直面して、解決策や答えを求めて考えをめぐらせるときは、まずその問題がどういう性質のものなのかを見極め、仕分けすることが大切です。
問題の性質を仕分けするとは、「箱に入れる」と言い換えてもいいでしょう。いきなり答えを求めるのではなく、とりあえず、それがどんな「箱」に分類されているのかを考える。そうすることで、考え方の枠組みのようなものがはっきりしてきます。
(中略)もっと別の次元での「正解のある問題」と「正解のない問題」もあります。
たとえば論点5で扱った「憲法9条は改正すべきか」という問題があります。先述したように、これは現実的に誰かが困っている問題ではありません。自衛隊が合憲であるということは野党も容認しているので、条文を変えても変えなくても現実は何も変わりません。
したがって、改憲か護憲かはイデオロギーの争いとなっており、それぞれの陣営がどれだけ根拠を集めてきても客観的に「正解」が出ることはありません。神学論争のようなもので、いわば「永遠の水掛け論」となる性質の問題だと思います。憲法9条の改正について考えるなら、この問題がそのような性質を持っていることを認識してから始める方がいいわけです。
どのような箱をいくつ持つかについては人それぞれであると出口さんは述べています。しかし、どんな箱に分類して考えるにしても、まずは専門家の意見を虚心に聞くことだと強調しています。
この本には、よりよく考えるための方法やヒントがたくさんあります。考えること、書くことのエネルギーを出口さんからいただきました。