退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

子どもたちに民主主義を教えよう

「子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む」(工藤勇一・苫野一徳著)あさま社

憲法とは何でしょう。すべての法律の中心にあるもの、私たちが守らなければならないものと考えてしまいます。しかし、憲法とは、私たち市民が対等で自由であることをルールとして保障するものです。国家は権力を濫用することがあります。そうならないように権力に歯止めをかけるためにあるのが憲法です。公教育においても「ルールを守ること」が強調されて、意味のないルールや不合理なルールがそのままになっている例があります。ルールは何のためにあるのか、よく考えないまま指導する教師とそれを受け入れる子どもがいます。「ルールは与えられるものではない、自分たちでつくるもの」という認識が必要です。

「体育教育」(2023年1月号)で、「つくる」スポーツの授業実践(山口紋佳)を読みました。小学校体育のバスケットボールの授業をするときに、今のルールを自分たちで変えることはあります。しかし、この実践は、バスケットの始まった頃のルールをもとに自分たちがルールをつくるという展開になっています。山口先生は、子どもたちが本音で語り合い、ルールをつくり変えていくことを授業の中心にしました。学習目標は「みんなが楽しめるルールづくり」です。初めはチーム人数が9対9でしたが、話し合いを通して4対4に変更されます。ディフェンスも2人と決めることでシュートを打つ子が増えました。「ゲーム中にみんながシュートを決められるようになる」というみんなで決めた目標も達成できました。

運動が苦手なAさんも活躍できるルールも考えました。Aさんのチームの試合では、Aさんの希望に合わせてソフトバレーボールを使い、跳び箱の踏切板を置くことに決めました。得意な子たちもAさんにパスを出す回数も増えて、Aさんがシュートを決めたときは、両方のチームが大喜びでした。体育科授業の工夫を通して「ルールはみんなで決めるもの」という意識が育つ実践だと思います。

「社会が変わらないから学校も変わらない、というのは違う、学校を変えれば社会は変わる」と工藤勇一先生は述べています。第2次大戦直後のスウェーデンは今の日本と同じくらい国会議員の女性比率が低かったのですが、今では47.0%(2021年)で、最も男女平等が進んでいる国の一つとなっています。教育で社会が変わるモデルと言えるでしょう。学校で民主主義を正しく教えれば、社会は変わります。