退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

授業で学級をつくる

  夏季休業中は延べ29回の面談を実施しました。授業や学級づくりに関すること、指導案作成など、1人約1時間。普段は短い時間しか話ができないので、まとまった時間にゆっくり話を聞くことができるのは貴重な機会でした。

 

  先生方との面談で聞いたことは、「もっとよい授業がしたい」「よい学級をつくりたい」という願いでした。よい学級、よい授業はどのようにして実現されるのでしょうか。この2つは別のものと考えないようにしましょう。授業を通して学級づくりをするのです。

 

  学級づくりの基礎的資質は4つあります。「積極性」「スピード」「丁寧さ」「他者尊重」です。

積極性とは「やる気」です。具体的な姿としては、「自分から動く」「自分から発言する」「自分から気づく」「自分からしっかり声を出す」「少しくらい失敗してもめげない」「指摘されたら素直に受け止める」などです。

「スピード」は「行動」「切り替え」「準備」「片付け」で見ます。

「丁寧さ」は指導しなければ育ちません。子どもの活動は何も言われなければ、どんどん雑になります。「ノート」「掃除」「給食」などをよく見ましょう。

「他者尊重」は、「他者の考えを受け入れる」「他者の気持ちを慮る」「他者について欠点も含め受け止める」「差別をしない」「他者の権利を奪わない」などです。

これら4つの基礎的資質を見定めて、授業で学級をつくるのです。

 

ではどのような指導でこれらの基礎的資質が子どもたちに身につくのでしょう。

これから4回に分けて具体的な指導の工夫を述べますので、ぜひ実践してみて下さい。

今回は積極性を高める指導の工夫です。

 ① 返事

 「返事」をいい加減なままにしていませんか?

 毎日の健康観察、授業で返事の機会は必ずあります。この「はい」の返事の質を高めましょう。黒板に「はい」と「はいっ」を書いて、どちらがよいと思うか考えさせましょう。「○○さんの返事は聞いていて気持ちがいいね」とつぶやきます。健康観察の後で「今日は誰の返事がいいと思いましたか?」と問いかけましょう。教え込むのではなく、問いかけて、考えさせて、気づかせましょう。

 ② 授業スタートの発問

 答えが分かる簡単な発問に対して挙手しない子をそのままにしていませんか?

授業の導入では、前時の振り返りの「問いの場面」をつくりましょう。全員が答えられるやさしい問いです。毎日少しずつ挙手できる子を増やしていきます。ときどき「数の伸び」を子どもと共有することも効果的です。基本は明るく励ましながら、ときには厳しく問い詰めることもあるでしょう。最終的に全員の手が挙がることを目指します。

 ③ 挙手

 教師の方だけを見て手を挙げていますか?

 AかBかの選択を問うとき、「Aと思う人?」「Bの人?」と子どもたちに手を挙げさせます。ここで自信がない子は、他の子の様子を見てから手を挙げます。ここでも子どもたちにどっちが望ましいのか考えさせることです。子どもはすぐに気づきます。たとえ少数派でも自分の考えを表明することのよさも気づくでしょう。まっすぐに教師の方だけを見て、天井に突き刺すような挙手。それは積極性が高まった学級の姿です。

 ④ 指名なし表明

 帯タイムに行う算数の計算練習で、「指名なし表明」ができます(授業でもできます)。

 計算問題が50問あるとします。始める前に自分の目標を決めさせて、「表明」させます。「50問終わらせます」「30問終わらせます」「3分で50問を終わらせます」「50問全部正解にします」など。決めた子から立って「表明」します。次に言う子は立って待ちます。つまり立っている子は常に2人。慣れてくると1分ほどで全員の「表明」が終わります。毎日できるといいですね。発表できる子を育てるには、このようにみんなの前で発言することに慣れさせることが大事です。

 

 たくさん発表ができる学級にしたいと思いませんか? そのためには初めのハードルを下げることです。どの子でもできる「返事」から始めましょう。スモールステップで、少しずつ確実にできる子の数を増やすのです。

                (参考文献「授業で学級をつくる」土居正博著)