退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

旅のスケッチ ホーチミン市② 突然靴修理男

「あああああああ!」
街中を歩いていたら大きな声が聞こえた。
どうやら私に向かって発せられている。
何か踏んだか?
何か落としたか?

気づくと若い青年が私の靴を指さしている。
そのとき履いていたのは10年近く愛用している靴。
ちょっと上等の休日用の革靴だ。
あちこち傷があり、底もすり減ってる。
何も言っていないのに男は傷の部分に黒クリームを塗り始めた。
それか!
しまったと思ったけど
まあいいか。
小銭を渡してやろう。
靴磨きなんてしないんだけど

「靴を脱げ」と言われてそうすると
今度は底のすり減った部分の修理が始まった。
そんなことしなくていい!!
そんな抗議は聞く様子もなく
あっという間に修理は完成した。
男は終始ニコニコしている。
上手な日本語で「29万ドン(約1500円)」
高いよ、20万ドンだけ!!
私は憮然としてその場を離れた
男は笑顔で「アリガト」と手を振っている

まあこれも旅の思い出
そろそろ捨てようか
と思っていた靴も命を救われた
きれいによみがえってまだしばらく使えそうだ
修理が必要だったのはすり減った私の心だったのかもしれない

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ホーチミン市 2019年3月