退職教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎著

藤原新也さんの写真と言葉は、強く深く響く。

今回は絵画や書まで含めた表現の全体を見ることができた。

2022年の私たちに届けられた言葉は「祈り」。

福岡市へ来たら博多駅近くのホテル「ザ・ベーシックス福岡」のロビーを見てほしい。

高くそびえる本棚が圧巻。画集、写真集、ガルシア・マルケス。見て美しく、読んで楽しい本が並んでいます。

ここは、その昔、マイケル・ジャクソンが泊まったホテル。

「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎

小学生のとき、歴史学習は明治頃までで終わっていた。何故なのかあまり気にならなかった。そういうものと思っていた。

自分が教える立場になったとき、先輩から「歴史は現代が大事だからね」と教えてもらったので、力を込めて授業した。「同じ間違いを繰り返してはいけないから、そのために」と、考えていた。

 

この本の第1章は、「戦争の教科書」。

ドイツの高校生は、ナチスについて詳細に学ぶ。アウシュヴィッツ強制収容所司令官の発言を読んで、以下の設問に答える。

「(1)アウシュヴィッツ司令官の目標と行為を調べなさい。(2)ユダヤ人への大量殺害の方法を明らかにしなさい。(3)〔この資料に〕記載されている犠牲者たちの辛抱強さについてあなたの考えを述べなさい……」

自国の戦争を学ぶことの厳しさに驚かされる。

 

フランスではナチスの占領下、市民たちが抵抗運動を続けていたことはよく知られている。私もそんな映画を観たことがある。

しかし、ナチスに協力した人たちもいた。それは戦後のフランスではタブーになっていた。事情は察することができる。振り返りたくないことだろう。しかし、1990年代になって、シラク大統領は、この問題に正面から向き合った。その演説は高校の歴史教科書に記載されている。自国の負の歴史にも正しく向き合おうとする姿勢が分かる。

 

韓国の高校歴史教科書の「まえがき」を読んでみる。

「『魂』があってこそ人は生きる意味を探せる。この『魂』とは歴史のこと。歴史なくして『魂』はありえない。歴史は、未来をどのように設計し、どのように生きていくのかを提示する役割をもっている。ある歴史家は『すべての歴史は現代史だ』と言っている。」

ここには読者の心に強く響く言葉が並んでいる。

 

日本の高校歴史教科書はどうだろう。「まえがき」を読んでみよう。

「日本史は、私たちの住む日本列島の中での人びとの歩みを探るものであるが、その歩みはさまざまな地域との交流の中で、その影響を受けつつ展開してきたものである。したがって、私たちは日本史を学ぶ場合、いつの時代についても、周辺の国々をはじめとする各地域の歴史や、日本と諸外国との関係に目を向けていく必要がある。

この教科書は、そのような視点から日本の歩みを知ることができるように編纂したものである。その場合、考古学や民俗学などを含めた、歴史学の新しい研究の全体像が理解できるよう、なるべく詳しく記述しているので、その内容をよく消化すれば、日本史についての十分な知識が得られると思う。」

公平に、偏らないように、という意図は伝わってくる。しかし、何かが欠けている、と感じるのは私だけだろうか。

 

シンガポールに行ったとき、博物館で日本占領時代の展示を見た。そこにはシンガポールの子どもたちがたくさん見学に来ていた。日本人は一人も見かけなかった。

アジアの国々を旅するときは、なるべく博物館に行こうと思う。

だって、ぼくらの戦争なんだぜ。