退職教員の実践アウトプット生活

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「シュリーマン旅行記 清国・日本」

シュリーマン旅行記 清国・日本」ハインリッヒ・シュリーマン 石井和子訳 講談社学術文庫

 

福岡にも緊急事態宣言が出ました。旅行に行ける日はまだまだ先のようです。しばらくの間旅行は本の中で体験するしかないですね。私が選んだ本は「シュリーマン旅行記」です。

トロイヤ遺跡の発掘で有名なあのシュリーマンです。彼は幕末の日本を訪れています。その当時の日本の様子を客観的に生き生きと記録しています。日本人は小さな家に住んでいるのだが、その生活は実に効率的であると伝えています。

 

  主食は米で、日本人にはまだ知られていないパンの代わりをしている。日本の米はとても質が良く、カロライナ米よりもよほど優れている。ご飯が炊けると、主婦は漆器の大きな椀(お櫃)に盛って、部屋の中央のござのうえに置く。次にそこへ、ピリッとしたソースで煮た魚を一椀と、日本人の好む生魚(刺身)の入ったもう一つの椀とが加えられる。それから、匙、ナイフ、フォークではなく長さ三十センチほどの漆塗りの箸と、皿ではなくて赤い漆塗りの椀が出る。どの椀にも聖なる火山・富士かコウノトリ(鶴のことだろう)が金で描かれている。コウノトリは長寿と至福の象徴として、富士山と同様、聖なるものとみなされている。

 家族全員が、そのまわりに正座する。めいめい椀を手に取り、二本の箸でご飯と魚をその小さな椀に盛り付けて、器用に箸を使って、われわれの銀のフォークやナイフ、スプーンではとても真似のできないほどすばやく、しかも優雅に食べる。

 

    食事が終わるとあっという間に片付けが終わり、同じ場所が寝室に変わる。日本人の生活は見事にシステム化されていてしかも清潔であるので自分たちも見習いたい、という謙虚な感想を述べています。日本の役人たちが決して賄賂を受け取ろうとしないことにも驚いたようです。そんな「正しさ」が昔の日本にはあったのに、今ではどこに行ってしまったのでしょう。当時の日本の女性の読み書き能力は他の国に比べて進んでいたようです。世界ではまだ女性の教育の機会がなかった頃に、すでに日本では男も女もひらがなと漢字で読み書きができていたのです。シュリーマンが日本のよさを素直に認め、賞賛しているので、何だかうれしい気持ちになります。シュリーマンが克明に記録した幕末の日本は驚きと楽しさに満ちています。絶対オススメの本です。

 

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