先週は、私が毎週訪問している学級で子どもの新型コロナ陽性者が出ていたことを聞きました。感染防止徹底の必要性を改めて感じました。
「群衆心理」ル・ボン
NHKテレビ「100分de名著」、9月は「群衆心理」。
武田砂鉄さんの解説は、鋭くかつユーモアがあって、とても分かりやすいです。
選挙の勝敗を決めるのは「風」、社会を支配しているのは「空気」、人々に大きな影響を与えるのはSNS。これらの「風」「空気」SNSは「群衆」が可視化されたものです。現代は「群衆の時代」と言えます。
ヒットラーはこの本を読んで、自らの権力奪取に活かしました。
フランクリン・ルーズベルトがメディアを活用して、参戦への世論形成に成功したときもこの本を読んでいたのです。
「群衆は暗示を受けやすく、物事を軽々しく信じる性質を持つ」
今年1月のアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件では、「選挙で不正があった」「民主党は裏で犯罪を行っている組織」など、群衆は荒唐無稽な陰謀論を信じていました。
まさにル・ボンが指摘した通りの出来事です。
「群衆は本能的に隷属する」
これも信じられないようなことですが、歴史が証明しています。
フランス革命後、市民の政治参加に道が拓かれましたが、ナポレオンの帝政にもどりました。
ソ連の崩壊後も民主化は進まず、結局は強いリーダーの出現を求め、独裁政権へ向かったのです。
「群衆は単純化、分かりやすさを好む」
政治家はキャッチコピー、標語を多用します。
群衆が「分かりやすさ」を好むことをよく知っているからです。
「分かりやすさ」は否定されるものではありませんが、「分かりやすいもの」の方が正しいと思ってもらっては困ります。
「分かりにくいもの」が「正しくない」となっては判断を間違えます。
「指導者は、多くの場合、思想家ではなくて、実行家であり、あまり明晰な頭脳を具えていないし、またそれを具えることはできないであろう。なぜならば、明晰な頭脳は、概して人を懐疑と非行動へ導くからである」
トランプとヒラリー・クリントンとの大統領選を思い出します。
ヒラリーは失業した工場労働者たちに、「新しい技能を学んでほしい。支援はする」と言いました。トランプは「昔のような工場を復活させる」と約束しました。結果はご存知の通り、「できない約束」をした者が勝利しました。
群衆心理の暴走を止めるためにわたしたちができることは何でしょう。
砂鉄さんは、「近づいて、分析し、指摘し、改善を促すこと」が大事と述べています。
私は教育の力も重要だと思います。
これからの教育で必要性が指摘されている批判的思考、多面的なものの見方、メタ認知能力などは群衆化を防ぐ砦となりうると考えます。
群衆心理の暴走を止めるためにも、真に「主体的な学習者」を育てなくてはなりません。