これは坂口さんが幸福とは何かを書いた本。坂口さんが人生ではじめて会った幸福な人が奥さんのフーちゃん。だからこの本は坂口さんが幸福について研究するため、フーちゃんにインタビューした内容になっています。
坂口さんは躁鬱病で、鬱の時は暗く不安で自分を否定してしまう。躁のときは気分が大きくなってお金を困っている人にあげてしまう。奥さんは普通は困りますよね。でもそうじゃない。これだけ聞いても何だかいい感じです。
私はウディ・アレン監督主演の映画「アニーホール」を思い出しました。ウディの私小説的な映画です。彼ははじめ、自分と似たタイプの女性と一緒になります。しかし、上手くいきません。その後、彼はアニーと出合います。アニーは自分と全く違う性格、どちらかと言えば正反対です。しかし、ウディはアニーといると幸せを感じます。不思議ですね。いや、そういうものなのでしょう。
何だか、コミュニケーションの秘密みたいなことを感じます。普通は考え方や価値観が同じ方が人間同士はいい関係ができそうです。そういう場合もあるでしょうが、違いがある方がいいこともある。そういうことです。
僕は幸福人にはなれないと思います。フーちゃんはネイティブ幸福人ですが、その反芻のしなさ、過去に一切囚われない、未来への不安のなさ、もうそれには歯が立ちませんし、数年かけたとしても、同じ思考回路になるのは無理です。そう書くと、またフーちゃんが笑うでしょう。「あなたはあなたのいいところがあって、私には私のいいところがあるんだから、あなたは私にはなれないし、もしなっても退屈して死んでしまうよ」と。(第八回 平凡な穏やかさ より)
「幸福人フー」 目次
第一回 幸福な人
第二回 フーちゃん語法
第三回 不安ゼロの人
第四回 思ってもいないようなことを口にしない方法
第五回 フーちゃんの目、躁の僕と鬱の僕の和解
第六回 躁状態の僕に対する工夫、フーちゃんの挑戦
第七回 「今までの自分」を叱らない
第八回 平凡な穏やかさ
「幸福人フー」を読んで フーより