退職しない教員の実践アウトプット生活

教育、読書、映画、音楽の日々雑感

ひどい戦争の記憶と冷徹な核戦略の間で

世界がどんどん不安定になっていることが気になります。かといって軍を増強することばかりではだめでしょう。まずは外交の努力が大事。政治家の発言を聞いていると、心配になります。勇ましい言葉、危機を煽るような振る舞い。日本はかつてたどった道に再び…

世界文学の体験記

「発達障害者が旅をすると世界はどうみえるのか イスタンブールで青に溺れる」横道誠著 文春文庫 本屋でこの本を見つけた時、帯にあるブレイディみかこさんと、高野秀行さんの推薦文が目に入りました。読むと分かります。まさにその通り、これは単なる旅行記…

わかる、はわからない。

ジャズ喫茶 おくら 熊本市 2025年9月 何だろう、と考えることは好きですか。例えば、何のために生きているのだろう。成し遂げたいことがあるから。誰かを守るために生きている。楽しいことがあるから…。一つの正しい答えはないようですね。難しいです。 考え…

わたしたちはバラバラで、同じ海の中でつながっている。

いつも行く3年生の教室。9月の歌は「手のひらを太陽に」。わたしも一緒に歌っています。声を出して歌うのは気持ちがいい。明るい窓の方に手を広げて見ている子がいます。何が見えましたか。悲しいときは、そうするといいよ。もっと悲しくなるときもあるけれ…

なんて美しいんだ、とわたしは言った。

「あれはズッキーニですか?」 教室で2年生の男の子が話しかけてきた。何のことだろう。窓の外を見ると学年園が見える。夏休みの間に大きく育った緑の果実。生い茂った蔓は2メートルの園芸ネットを越えて隣の木をつたい、そのてっぺんまで達している。小学…

コッポラは市民ケーンだった

巨匠コッポラの新作「メガロポリス」を見ました。評判が散々なので心配していたのですが私は楽しませてもらいました。分かりにくい映画です。しかし、各場面はよく作りこまれているので強い力で引きこまれます。映画と想像の世界が混ざり合っているところは…

急に具合が悪くなる ルノワール

「がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの人生を賭けて交わした20通の往復書簡。」 「急に具合が悪くなる」晶…

佐賀にいったい何があるというんですか?

映画館に入ると両側の様子が何か違うことに気づいた。中央の席は普通の映画館の席。しかし、通路をはさんだ両側にはソファがあった。それも一つ一つバラバラ。二人掛け、一人掛け、両肘があるものないもの。一人掛けソファの真ん中には小さなテーブルがある…

天上の本屋 マレーシア旅行記②

クアラルンプールのLit Booksという本屋に行った 店内にカフェスペースもある居心地の良い本屋 文学好きなオーナー夫婦の趣味が反映された品揃え 文学だけでなく、音楽や哲学の本も充実している ジョニ・ミッチェルやレナード・コーエンも見つけた ご夫婦は…

イカロスたちの夏

日本が起こした戦争について考えている。今振り返ればわかる。歴史を学べば誰でもわかるに決まっている。勝つはずがなかった。それなのになぜ始めてしまったのか。 総力戦研究所というのがつくられていた。日本が真珠湾を攻撃する直前。メンバーはまだ30代…

タイムマシンにお願い マレーシア旅行記①

アジアでまだ行ったことがない国へ行ってみよう。韓国、中国、台湾、ベトナム、シンガポール、インドネシア。どこもとても楽しかった。次はどこだ? マレーシアへ行ってみよう! クアラルンプールで5日間過ごしました。安全、物価が安い。人々は明るくて親…

ロシア文学の深い森 「鼻」ニコライ・ゴーゴリ著

ある朝、パンを食べていたら鼻が出てきた。 ありえんやろう。そうつぶやいてしまそうな冒頭です。チェーホフ、ツルゲーネフ、トルストイ、と読んできたので、まさかそっちからボールが飛んでくるとは。「ソーンダーズ先生の小説教室」の続きです。 鼻を見つ…

誰も知らない

「フロントライン、すっごくよかったすよ」 事務室のNくんが教えてくれました。見て納得。「国宝」に続いて「フロントライン」、日本映画は傑作が続いています。 この映画は、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プ…

母の話(2) 福岡の生活史 しょうけごえ

今年92歳の母からの聞き書きを続けています。福岡から飯塚へ向かうときに通る峠を「しょうけごえ」といいます。母の話を聞きながら、じいちゃんがしょうけを抱えて峠を越えていく姿が浮かんできました。 夏はいつも篠栗に行きよった。篠栗はお母さんの里よ…

誰も君を愛さない

ジョン・レノンのインタビューを思い出した。自分の人生を振り返って、「漁師だったらよかったのに」と語っていた。本当はそんなこと思っていないだろう。だって、みんなジョンみたいになりたいと思っているのに。スーパースター、有名人、天才音楽家、みん…

春樹とアンパンマン

痛みは突然やってくる。2年生の教室に行ったときのことです。教室前面にある可動式黒板が下がったままだったので、上げることにました。しゃがんで両手でレバーを握って上げようとしても動かない。何十年も使っているのでこわれかけているようです。もう一度…

それはぼくぢゃないよ

ずっと喉に違和感があったので、気になってしかたない。もうすぐ70になるし、悪い病気かもしれない。癌か?いやだなあ…。まだもう少しは生きたい。などとくよくよと考えていた。覚悟して病院へいくと、あっさり言われた。「これは風邪ですね。薬を出してお…

生きることの肯定

「やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく」(梯久美子著)を読みました。 やなせたかし(柳瀬嵩)が生まれたのは1919年(大正8年)。5歳のときに朝日新聞の広東特派員として単身赴任していた父が死去。7歳のとき、母の再婚に伴い、伯父の家に引き取…

白土三平のバラッド

男はある日、家までの帰り道でギャーという奇妙な鳴き声を聞いた。男は、どうしてもその声の正体が知りたくなって、他人の家の敷地に入っていった。そこには鳥小屋があり、奇怪な声の正体を見た。ふと気が付くと、後ろに老人が立っていた。「ここで何をして…

藤原新也はレッドベリーだった

今年度、私が担当している新人の中に5年生を担任している教員がいます。これはいい機会です。私が以前から実施したいと思っていた授業が実現できそうです。釜山の教室と福岡の教室をオンラインでつないで子ども同士が英語を話す授業を計画します。通信環境は…

まじで、サヨナラべぃべぃ

理科室の前を通ったらこんな言葉があった。 「人生で変えることができるのは自分と未来だけ」 野口英世の言葉らしい。人は自分よりも他人を変えたいと思うし、未来より過去を変えたいと願ってしまうからね。自分なら変えられるし、未来も変わるのに、そっち…

百年はもう来ていたんだな

教え子たちのLINEグループを見ていると、若い頃の自分の動画がありました。 見知らぬ男性とハグしています。 誰だろう? こんな同僚いたっけ? なぞはすぐに解けました。 AIか。 30歳のころの自分と40歳をこえた教え子がハグする動画。 30年以上前に撮…

わたしたちにはなぜ物語が必要なのか

物語を進める原動力はなんでしょう。 ソーンダーズ先生の案内で「かわいいひと」(チェーホフ)「主人と下男」(トルストイ)を読んで気づくことがありました。かわいい女は結婚と死別を繰り返します。主人と下男は雪の中の強行突破を何度も行います。思い出…

母の話 福岡の生活史

今は長谷のダムがあるやろ、あそこの底に家があったとよ。学校までは遠かったよう。裸足で歩いて行きよった。香椎小学校まで。遠いやろう。よう歩きよったね。だけん今も元気なんかもしれんね。 農家たい。何にもなかった。店とかあるわけないよ。お菓子とか…

傷がないのが傑作ですか?

学生だった1970年代後半、話題になっていたソ連(当時)の映画を見た。何とよくできたお話だろうと感心したことを覚えている。その原作がチェーホフ。以来、いつか読んでみたいと思っていた。それがこの本を選んだ理由。 「ソーンダーズ先生の小説教室」…

ロイヤルホストで夜まで語りたい

このブログのタイトルを変えることにしました。まだしばらく仕事を続けるので「退職しない教員」に変えます。 今年度は再び1年次教員を指導する仕事をすることになりました。3つの小学校の6人の新人教員をサポートします。6つの学級を毎日順に回ります。 …

きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ

「だけど何かが起きている そしてあんたにはわからない そうだろ? ミスター・ジョーンズ」 (「やせっぽちのバラッド」ボブ・ディラン) 3月の修了式の後から体調を崩した。咳、発熱、倦怠感。病院へ行って検査してもらったら、「風邪だと思います。働きす…

主体性を育てるにはどうすればいいのか?

3月24日は修了式。学校の1年間が終わります。私が担任していた1年2組の子どもたちともお別れです。振り返ってみると、できなかったことばかりが頭に浮かんできます。 主体性を育てることは、学習指導要領のキーワードです。私が勤めた学校でも重点の第…

百年はもう来ていたんだな

東京都現代美術館 2025年3月 百年私の墓の傍で待っていて下さい。きっと逢いに来ますから。(夏目漱石「夢十夜」) 東京都現代美術館「坂本龍一 音を視る 時を聴く」。田中泯の声による夏目漱石「夢十夜〈第一夜〉」に引き込まれた。夢十夜はこれまで何度も…

2025年新宿の「甘い生活」

今年初の東京です。 新宿のNTTインターコミュニケーション・センターで「evala 現われる場 消滅する像」を体験してきました。視覚を中心にした表現領域である「美術(visual arts)」に対し、聴覚を中心にした表現として「サウンド・アート」があります。サ…